「たかが片頭痛」と軽視する日本人に伝えたい事実

富士通など対策に動き出す企業も登場

坂井文彦先生の頭痛相談(写真提供:富士通)

片頭痛に対する治療といえば、これまでは鎮痛薬か急性期治療薬のトリプタン製剤を使うしかなかった。いずれも一定程度の効果はあるものの「痛くなってから使う薬」であるうえ、鎮痛薬は飲みすぎによる問題が、トリプタン製剤は効いている時間が2~5時間程度と短いという問題が、それぞれにあった。

そんななか、片頭痛患者に朗報となったのが新しい予防薬「抗CGRP抗体」の登場だ。4月に日本イーライリリーのエムガルティ(ガルカネズマブ)が、8月に大塚製薬のアジョビ(フレマネズマブ)、アムジェンのアイモビーグ(エレヌマブ)が発売された。

「抗CGRP抗体の登場には、なぜ片頭痛が起こるのか、そのメカニズムが明らかになってきたことが大きい」と坂井さんは解説する。そのメカニズムとは、“セロトニン-三叉神経-脳血管”説だ。

脳内では、セロトニンという脳内神経伝達物質が自律神経の働きを調整したり、不安などの感情を抑制したりしている。このセロトニンが関わっている神経の1つが、顔の表面の感覚などを脳に伝える三叉神経だ。

「三叉神経は、顔や頭の血管を拡張させたり、収縮させたりといった働きも担っているため、何らかの理由でセロトニンが減少すると三叉神経の調整がきかなくなってしまう。その結果、血管が拡張してさまざまな炎症物質が漏れ出し、片頭痛が起こるというのです」

この一連のメカニズムを川に例えると、上流にあたるのがセロトニンの低下で、この部分をターゲットにしているのが、片頭痛に関係するセロトニンをピンポイントで活性化するトリプタン製剤だ。

「片頭痛の原因の主役」が最近になってわかった

そして、下流にあたる血管拡張と周囲の炎症をターゲットにしたのが、今回登場した抗CGRP抗体薬になる。

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、三叉神経など末梢神経に存在するタンパクで、脳の血流の自動調節に関係している。最近になって、“CGRPこそ片頭痛の原因の主役”であり、これをブロックすれば片頭痛が予防できることがわかってきたという。

「CGRPは脳血管にある受容体にくっつくことで作用しますが、新薬はCRPGが受容体にくっつくのを阻止することで血管拡張や炎症を抑え、片頭痛を予防します」

と坂井さん。抗CGRP抗体はいずれも注射薬で、4週間に1回の投与で痛みの発症を抑える(アジョビは12週間に1回のものもある)。

薬代は3割負担で1万2000円~1万3000円台と決して安いとは言えないが、埼玉国際頭痛センターでは、すでに100人以上の片頭痛患者が抗CGRP抗体を使っている。7割ぐらいの患者で痛みの程度が半分ぐらいになったそうだ。

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