ドリームキャストの壮大な失敗に見た多大な教訓

工程の中で重要なボトルネックはどこなのか

セガサターン失敗の要因の1つと言われていたソフトメーカーの巻き込みについてもテコ入れが図られました。ソフトメーカーが参加しやすい環境を整え、入交社長はじめ経営陣が各社を口説いて回りました。プレイステーションのソフトが頭打ちになってきた背景も相まって、約320社のソフトメーカーがドリームキャスト開発に賛同します。この数字はセガサターン立ち上げ時のおよそ2倍です。

ドリームキャスト発売半年前の1998年5月、入交社長は、ソニーや任天堂が新型機をリリースする前に市場を制する意気込みを見せます。販売計画について「発売3カ月で100万台を出荷、1年後には150万台から200万台の販売を計画している」と述べ、さらに、2001年時点のセガ単体での売り上げ目標を5500億円、そのうち3000億円をドリームキャストの関連事業で稼ぎ出すプランを披露しました。

このように、まさにセガの運命を背負ったドリームキャストだったのですが、その裏側で、発売前から暗雲がたれこめていました。

半導体供給に失敗し、最大の販売機会を逃して失速

セガは、秋元康氏を宣伝担当取締役に据えて、コンシューマ事業統括本部副統括本部長だった湯川英一専務をCMキャラクターとして登場させるという奇策に出ます。

少年たちが「セガなんてだっせーよな」「プレステのほうが面白いよな」というセリフを吐くこのCMは、その自虐的な演出によって注目を集めます。

高スペックのハードウェア、話題のCMといった勢いを得て、発売直前には販売店に徹夜組が行列をつくるほどの人気を得ました。

しかし、事態は思わぬ展開を見せます。100万台を目指した年末商戦でしたが、実際にはその半分の50万台しか売れなかったのです。

その原因は、商品の在庫切れ。売るべきタイミングで、売る商品が十分に用意できなかったのです。ゲーム機の心臓と言える半導体チップの開発が大幅に遅れ、発売は間に合ったものの十分な数をそろえられませんでした。

問題の半導体は3次元のグラフィックを支える「PowerVR2」。この半導体の開発の遅れは、ソフトメーカーにも影響を与えます。半導体の仕様によって、ソフト開発の方法が決まっていくからです。

ゲーム機が店頭にない、そしてソフトも少ない。このような状況で年末商戦は失敗に終わります。この出だしのつまずきはあまりに大きいものでした。

さらに、相次ぐ改良作業により半導体の構造は複雑になり、量産してもコストが下がりにくくなってしまいました。ドリームキャストは高コスト体質、つまり利益の出にくい事業と化してしまったのです。

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