ポイントカード作って損をする人・しない人の差 人々の目を容易にくらます「行動経済学」の罠

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それと同時に「ポイント」の仕組みには、買い手にとって損を忘れさせるほどの魅力があるとも考えられます。一般的なネット販売や航空会社などのポイントサービスに見られる魅力点を、いくつか以下にあげていきます。

①ポイントを貯める楽しみがある
②ポイントの収集状況に応じて、ランクが上がり優遇措置を受けられる
③会員限定の割引や、キャンペーンなどのメリットがある

ポイントサービスは、売り手が買い手を顧客として維持し続けるための手段です。そのために売り手は、システムの提供費用やポイントの源泉となる資金などのコストを負担します。そのうえで、ポイントサービスの仕組みは、買い手に対して「有形無形の保有物」を提供するという特徴があります。具体的には、以下の3つです。

①収集で増えていくポイントそのもの
②買い手個人のステータス
③得をするチャンス

行動経済学の視点で見ると、これらが買い手を引きつける理由になります。

さらに、買い手の心の中に、すでに解説した「保有効果」の心理が働きます。自分が保有するモノに高い価値や愛着を感じ、手放したくないと感じる心理です。

この心理は、お金やモノなどの有形物だけでなく、身につけたスキル、自分の評価など無形物に対しても働きます。買い手は、ポイント、ステータス、チャンスの3つに対して、保有していない他人からは理解できないほど、高い価値を感じるのです。

たとえば、積み上がっていくポイントの数値は、まるで自分自身の努力を示す点数であるかのように思えます。一度、手に入れたステータスや、会員限定キャンペーンに参加する権利も、手放すことのできない大切なものに見えるのです。

「Go To Eat」は本当にお得だったのか?

ここまでは、ポイントが人々の心理に与える影響について解説してきました。では、このポイントサービスというマジックめいた仕掛けに、積極的に参加する必要があるのでしょうか。

その答えについては「その仕掛けは、誰が何のために仕掛けているのか」「それを知ったうえで賛同できるかどうか」で判断すべきでしょう。

たとえば、2020年に実施された「Go To Eat」キャンペーンで考えてみましょう。これは、国が感染予防対策に取り組む飲食店の需要を喚起し、同時に食材を供給する農林漁業者を支援するキャンペーンです。

その一環である「プレミアム付食事券」は「販売額の25%を国が負担する(例:1万2500円の食事券を1万円で購入可能)」という特典があります。「25%お得」というアピールです。

この仕組みを「割引」で表現するとどうなるでしょうか。

次ページなぜ国は「25%得」を押し出したのか?
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