ポイントカード作って損をする人・しない人の差 人々の目を容易にくらます「行動経済学」の罠

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もし、1万2500円分の食事をして代金が1万円で済んだならば、差額の2500円は、本来払うべき1万2500円の20%なので「20%割引」となります。

ところが、国は「20%割引」でなく「25%得」を前面に出しています。2通りの言い方は、どちらも間違いではありません。では、なぜこういう言い方をするのでしょう。

国が行うキャンペーンの目的は、消費者により多くお金を使ってもらうことです。それが外食産業や農業などの第1次産業を救うことになるのです。こういった目的があれば、お得感の強い数字をアピールすることは善である、と言えるのではないでしょうか。消費者として参加することも、また善だと考えられます。

その関係はWin-Winか?

では改めて、保有効果を活用したポイントサービスを、どう考えるべきでしょう。確かに、これは買い手の無意識に働きかけ、行動を操作する仕掛けです。ただ、結果的に、買い手が心理的なメリットを得ていることも本当です。

『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ポイントが貯まる際の期待感や達成感、重要顧客の待遇でくすぐられるプライド、限定されたメンバーとして希少な購入チャンスを得られる喜びなど、ポイントサービスによってさまざまな心理的メリットを体験できます。

ですから、ポイントを貯めて顧客であり続けるのも1つの選択です。それが、顧客の囲い込み目的であっても、メリットを感じるならば気にする必要はありません。Win-Winの大人の関係が成立するのは、決して悪いことではないでしょう。売り手の立場であれば、積極的に顧客との関係作りをするべきです。

2021年時点のポイント業界においては、「Tポイント」「楽天スーパーポイント」「Pontaポイント」などの大手共通ポイントへの集約が進んでいます。確かに、利用者にとって、貯めやすく使いやすいポイントは便利です。

一方、地域の個性ある小規模の流通サービス業が、独自のポイントカードを発行しているケースもあります。むしろ、小規模なポイントサービスのほうが、カードの券面デザインなどで個性を発揮できるかもしれません。

ポイントサービスが、金銭的なやり取りの道具としてだけでなく、売り手と買い手の関係作りに活用されるのはいいことだと言えるでしょう。

では、逆に買い手にとっての「ダメな買い物」は何でしょう。

まずフレーミングに惑わされて、本当に得な選択がどれかわからない状況です。あるいは、保有効果とは何かも知らず、漫然とポイントを貯めている状況もよくありません。

現在では売り手が、買い手の「無意識の心理」に仕掛けるケースは増えています。また、その手法も多様になり、洗練されてきました。

したがって買い手も、心理に関して知らなければ、同じレベルに立つことができず、よい関係を結ぶことも難しいでしょう。「いい買い物」をしたいのであれば、知識を備えることは必要条件だと言えそうです。

橋本 之克 マーケティング&ブランディングディレクター

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はしもと ゆきかつ / Yukikatsu Hashimoto

1964年神奈川県生まれ。東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。環境エネルギー、金融、住宅、消費財のマーケティングや広告の戦略を策定。著書に『9割の人間は行動経済学のカモである』(経済界)などがある。寄稿・セミナー講師も多数。宅地建物取引主任者。
 

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