アステラス製薬、3000億円買収会社に思わぬ試練

期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか

1度目の治験中断時、アステラスの業績への影響は小さくなかった。AT132の無形資産として計上していた1023億円のうち、588億円を減損損失として計上。2021年3月期の営業利益は元々見込んでいた2105億円を大きく下回る1360億円で着地し、前期比でも4割以上の減益となった。

2018年に就任した安川健司社長は、研究開発の手法を大きく変えた(撮影:尾形文繁)

アステラスの安川健司社長は、「治験の失敗を最初から見込めるわけではない。減損で騒ぐほうが不思議」と話すが、業績の足を大きく引っ張る要因となったことは確かだ。

【2021年10月4日11時00分追記】初出時のコメントを上記のように修正いたします。

有価証券報告書によれば、オーデンテスの買収額約3200億円のうち2712億円が無形資産として計上され、AT132だけで1023億円を占めていた。つまり買収金額のおよそ3分の1はこの新薬候補に支払った計算だ。減損の計上後も、AT132の無形資産は427億円が残っている。

追加の減損はあるか

アステラスは「今後FDAと治験の再開などについて協議する。(AT132の治験ストップに伴い)現段階で減損を計上するかどうかは未定」とする。ただ前回の減損は、治験プログラムの変更によって投与量が想定よりも減り、対象患者が少なくなったことが引き金になっている。今回、その低用量でも治験を中断せざるをえなかったことを踏まえれば、追加の減損計上の可能性は否定できない。

ただし、今回の治験中断が発表されても、アステラスの株価が大きく下がることはなかった。「前回の減損時からAT132は少しあやしいという認識だった。今回の中断で急にドタバタすることはないが、第2四半期(2021年9月期)の決算に影響があるのかどうか」(クレディ・スイス証券の酒井文義アナリスト)を株式市場は注視している状況だろう。

アステラスにとって、遺伝子治療薬のような次世代薬を育てることは急務だ。なぜなら、全社の売上高の4割を占める大黒柱、前立腺がん薬「イクスタンジ」の特許切れが2027年に迫っているからだ。イクスタンジは2022年3月期で5572億円の売上高が見込まれている超がつく大型薬。だが特許が切れる2027年以降、同じ薬効でより安価なジェネリック薬が登場し売上高の急降下は避けられない。

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