アステラス製薬、3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか
製薬大手のアステラス製薬が思わぬ試練に直面している。
9月14日、アステラスは開発中の遺伝子治療薬「AT132」の臨床試験で、被験者1名が死亡したことを発表した。この被験者の「重篤な有害事象」はすでに報告されていたため、薬の治験そのものはすでに9月1日時点で一時ストップしている。
製薬業界全体を見渡せば、思わぬ副作用が出たり有効性が確認できなかったりで、治験がうまくいかないことは日常茶飯事だ。創薬の成功確率は3万分の1ともいわれる。
だが問題なのはその中身。今回開発を中断したAT132は、アステラスが約3200億円という巨費を投じて2020年に買収したアメリカのベンチャー企業・オーデンテス社が持っていたもの。同社の中でも、AT132は最も開発が進んでいた新薬候補だ。製品化されれば、将来的には最大1000億円の売上高も期待されている。
2度目の治験ストップ
実は治験がストップしたのは今回が初めてではない。2020年8月までに、被験者23名のうち高用量を投与されていた3名の被験者が死亡、治験を監督するアメリカのFDA(食品医薬品局)から差し止め指示を受け、一度治験を中断している。
その後のFDAとの協議によって投与量を減らす治験プログラムに変更し、2020年12月から治験を再開。これで問題はクリアしたかに思われたが、再開時に低用量を投与された最初の患者が、9月に死亡した冒頭の被験者だった。
AT132が治験の対象にしているのは「X連鎖性ミオチュブラーミオパチー」という、まれな遺伝性の病気だ。新生児が重度の筋力低下と呼吸障害によって死に至る難病で、生後1年半の生存率は50%といわれている。4万~5万人の男児に1人の割合で発症し、現在、治療法はない。
遺伝性の難病に対し、AT132は「遺伝子治療薬」と呼ばれるもの。これは、本来の遺伝子の欠損や変異によって起こる病気の場合、その遺伝子を補うことで治療を目指す。比較的新しいアプローチの治療法で、これまで治療法がなかった難病などへの応用が期待されている。
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