裏切られたフランスを悩ませる「不愉快な現実」 米英豪が原子力潜水艦提供で密かに合意

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

太平洋地域に領土と軍事的プレゼンスを持つフランスは、アメリカや一部のアジア諸国ほど強硬ではないものの、ヨーロッパの対中戦略をリードする立場にあった。

潜水艦計画が失敗したことで、フランスがもはや大国でない現実が明らかになったのか――。パリのラジオインタビューでそう問われたフランスのフィリップ・エティエンヌ駐米大使は、次のように答えた。「私たちは(国際政治の)バランスを左右する国であり、重要だ。私たちにはその手段がある」。

「大国としての自我」が招く失態

だが、今回の件は実力以上のことをしようとするフランスが招いた失態ともいえる。

「太平洋地域には商業的、経済的、領土的な利害があるため、フランスには戦略が必要だ。しかし、私たちが持っている手段では、フランスは中国に対峙していくうえで、アメリカに代わる確かな選択肢とはなりえない」と、フランスの国防省と外務省の官僚を経て、現在はフランス代表のヨーロッパ議会議員を務めているアルノー・ダンジャン氏は語る。「太平洋地域は大国の草刈り場となっており、そこはアメリカと中国の独擅場だ」。

アフリカの旧植民地というフランスの影響力が極めて強い地域でさえ、中国、ロシア、トルコなどの影は濃くなってきており、フランスは対外政策の優先順位を明確にする必要に迫られている、とダンジャン氏は話す。

ところが、大国の自我にとらわれたフランスは、まさにその点に苦しんでいる。マクロン氏は強いヨーロッパがあってこそフランスは力を持つことができると述べながら、単独で突き進むことが多いとダンジャン氏は言う。

2020年、かつてフランスの植民地だったレバノンの首都で大爆発が起こり都市の一部が壊滅すると、マクロン氏はレバノンの政治に秩序をもたらすという決意でベイルートに急行し、そのわずか数週間後に行われた二度目の訪問で「15日以内に新政府が樹立される」と宣言した。が、組閣は失敗。マクロン氏はレバノン政界の「裏切り」を非難し、「恥ずかしく思う」と発言した。

「フランス人には過去の栄光を懐かしむ傾向が少しある」とダンジャン氏は話す。「問題はこうした態度でいると、物事がうまくいかなくなったときに、今回のオーストラリアの件と同様、難しい状況に陥ってしまうことだ」。

(執筆:Norimitsu Onishi記者)
(C)2021 The New York Times Company

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事