裏切られたフランスを悩ませる「不愉快な現実」 米英豪が原子力潜水艦提供で密かに合意

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アメリカ、イギリス、オーストラリアはフランスに内緒でオーストラリアに原子力潜水艦を提供する交渉を進め、フランスがオーストラリアと取り交わしていた既存の潜水艦契約をぶち壊しにした。フランスが今後数十年にわたって太平洋地域で力を誇示する構想も一瞬にして消し去られた。

エマニュエル・マクロン大統領らフランス政府が、アメリカ、イギリス、オーストラリアによる新たな潜水艦契約について知らされたのは、発表のわずか数時間前だった。

これにより、「西側」や「同盟」といったフランス外交の前提は突如として覆った、とフランスの国際関係を専門とするパリ政治学院のベルトラン・バディ氏は述べる。

「私たちは小国とみなされた。フランスのような国にとっては致命的なことだ」

マクロン氏とアメリカのジョー・バイデン大統領による9月22日の電話会談の後に発表された共同声明を見る限り、アメリカはフランスに無礼を働いたことを認めているようだ。アメリカは「開かれた協議」を行うべきだったという点でフランス側に同意し、今後はきちんと協議すると約束した。

フランスが固執しているのは「地位」

だがフランスにとって、これはたいした気休めとはならない。

過去の栄光にどっぷりとつかっているフランスは、バディ氏によると、今でも自身が世界の序列の最高位に位置すると考えている。そのような自己認識が他国との関わり方を決定づけているということだ。かつて自らの植民地であった国々についても同様で、フランスはこうした国々に対して今でも「特別な責任がある」という立場を取ることが多く、そうした発想が旧植民地諸国との外交の基礎になっているという。

フランスは新興国への対応にも苦しんでいる、とバディ氏は話す。その状況は「ディナーで成金の田舎者の隣に座らされたようなもので、古くからの貴族には耐えがたい」。

パディ氏は「フランスが固執しているのは地位だ」と語る。「フランスはなんとしても地位を維持しなくてはならないと考えている。こうした願望は精神分析が必要になるほど、フランス人の深層心理の深いところに存在する」。

2016年にフランスは、原子力を用いない攻撃型潜水艦12隻を提供するという、額にして660億ドル(約7兆3000億円)の契約をオーストラリアと交わしていた。期間が50年間にわたる同契約は、太平洋地域におけるヨーロッパの対中戦略の基礎になるはずだった。

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