裏切られたフランスを悩ませる「不愉快な現実」

米英豪が原子力潜水艦提供で密かに合意

アメリカのバイデン大統領(写真左)とフランスのマクロン大統領(写真:Doug Mills/The New York Times)

アメリカがオーストラリアに原子力潜水艦を提供する契約を密かに取り決めた「裏切り行為」にフランスが怒りをあらわにした背景には、フランスの痛いところを突く、ある問題が存在している。

フランスが長く避けてきたこの問題について、ロピニオン紙は「白雪姫」のセリフをもじった問いかけを1面トップに載せた。

「鏡よ鏡、私は今でも大国なのか?」

ヨーロッパは衰退したかつての帝国だらけだ。だが、フランスほど大国としての過去にこだわっている国もない。インド太平洋地域やカリブ海にも領土を持っているため、今でも自らを世界的な利害関係者と見なしているのだ。

自らが偉大な大国であるとの感覚に染まったフランスは、古きよき啓蒙主義を持ち出して現代の世界を覆う愚民政策と戦うと語り、フランス流の普遍主義を近代社会のモデルとして差し出す。フランスは地政学的に身の丈を超えたがんばりを見せることが多いわけだが、そうした無理がたたる場面も少なくない。

われわれはもはや大国ではない?

フランスがなおも大国であるかどうかという問題は、そうした問いかけが続いているという現実も含めて、いかにフランスの国民精神が過去の栄光によって形づくられているかを示している。裏返せば、「国としての凋落が進んでいる」というテーマはフランスの国内政治の中でも特に関心を引くものであり、主に右派と極右はこの問題を前面に押し出している。

だからこそ、フランスは今回の潜水艦危機で「鏡」をのぞかなければならなくなった。曖昧な答えで心を落ちつかせるのではなく、不愉快な真実を求めざるをえなくなった、ということだ。自らが思い描く姿と実際の国力の間には、埋めがたい溝が存在していたのか――。

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