BMW X7「西陣織仕様」芸術性という高級車の価値 究極の職人技を市販車に搭載する小さくない意味
ところで、発表会場に現れたX7には、天井部分にもアームレストと呼応する見事な西陣織を施してあったのだが、これは実際の販売車両には装着されない。関係者に訪ねたところ、もともとは天井部分も西陣織を張りたかったらしいのだが、ルーフに備わるエアバッグの展開に100%問題がないかどうかの検証に、10台分の実証試験が必要になると判明し、あまりに無駄が多いと断念したのだそうだ。
継続してきた日本の名匠とのコラボ企画
BMWジャパン社内で「BMWと日本の名匠プロジェクト」の実務を中心になって進めてきたのが、同社BMWブランドマネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング部門の御舘康成プロダクト・マネジャーである。マツダでRX-8などの製品企画に携わったあとBMWジャパンへ移籍、現行3シリーズの担当を経てラグジュアリー・クラスと呼ばれる7シリーズ/8シリーズ/X7の国内の仕様決定を手掛けている。
「このプロジェクトの発端は、BMWが昨年までスポンサードしていたKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭を記念する車両として、第1弾となる『BMW 8シリーズ グランクーペ 京都エディション』を用意したことでした」と御舘氏は明かす。2020年4月に予定されていたKYOTOGRAPHIEは、コロナ禍の影響で中止になったが、2019年秋には車両の概要が固まっていたそうだ。
センターコンソールを漆塗りとし、漆芸家・岡田紫峰氏が蒔絵螺鈿細工を施す「京都エディション」のアイデアは、京都地区でBMW正規販売店を営むマツシマホールディングスが展開する、カーインテリアのカスタマイズ事業「Kiwakoto」を介して実現されたものだった。自動車インポーターの製品企画がディーラーの取り組みを発端とする、というのもこれまであまり例のないケースといえるだろう。
プロジェクトの第2弾として、金属フレーク含有率が特に高いピュアメタル・シルバーを外板に用い、人間国宝の鍛金家・奥山峰石氏が手掛けた内装パネルに彩られた「7シリーズ ピュアメタルエディション」は東京の職人に委ねられたが、第3弾である「西陣エディション」は再び京都に題材を得た。
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