BMW X7「西陣織仕様」芸術性という高級車の価値 究極の職人技を市販車に搭載する小さくない意味
BMWジャパンが「BMWと日本の名匠プロジェクト」と名付けて、特別仕様の限定車を販売する連続企画を展開している。わずか2~3台ずつを販売する企画、その第3弾として9月22日、「BMW X7 西陣エディション」が発売された。
クルマの販売を促進するために、通常のカタログラインナップにない内外装の組み合わせを施した特別仕様車は、国内外どこのメーカーでも手掛けている。メーカー/ブランドの周年記念、あるいはモータースポーツで世界選手権を獲得した際など、そのモデル専用のデザインやカラーを施したものが登場して人気を集めるケースもある。
そうしたよくあるパターンであればこの“自動車最前線”で紹介するほどのこともないだろう。しかし、3年前までBMWジャパンに在籍し、経営チームの一員として製品企画の最終決定会議にも出席していた筆者は、今回の「X7 西陣エディション」を含む一連の限定車に、「こういうチャレンジがよくできたものだな」と感心させられた。これからの高級車のありかたについての示唆を含む企画だといえるからだ。
ベース車430万円高の1680万円
「X7 西陣エディション」の価格は、ベースモデルである「X7 xDrive40d デザインピュアエクセレンス」に比べ、430万円も高い1680万円である。
BMWには内外装のカラーや素材を部位ごとにオーナーの好みに特注できる「BMW Individual」というビスポーク・プログラムがある。「X7 西陣エディション」はその幅広い選択肢からボディカラー、シートおよび天井の素材、アルミホイールなどを組み合わせており、それだけで相当な金額になっているはずだが、ハイライトは京都の西陣織の技術を投入したフロント・センター・アームレストおよび、ダッシュボード上のインスツルメント・トリム・パネルである。
自動車のインテリアには火災に備える難燃性や、10年以上の使用に耐える耐候性・耐久性などの基準があり、メーカーは品質保証のためにさまざまな試験を繰り返してようやく製品化にこぎつける。自動車ショーなどに出てくるコンセプトカーに面白いデザインがあっても、なかなか路上を走る製品に反映されにくいのには、単純な製造コストの問題だけでなく、そうした障壁の高さにも原因がある。
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