BMW X7「西陣織仕様」芸術性という高級車の価値 究極の職人技を市販車に搭載する小さくない意味

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その企画の大枠が固まったのは今年2月。車両は4月に生産されて6月末に日本上陸、7月に専用部品の架装をして撮影などの準備に入ったというから、大忙しである。しかしこのことは、このプロジェクトが純粋に日本サイドで企画・実行されたことの証左でもある。

「ドイツのマーケティング・コミュニケーションチームからは『素晴らしい取り組みだ』という声を聞きましたし、各国のプロダクト・マーケティング担当者からも『これはどうやって作ったの?』とはよく聞かれます」と御舘氏。この3つのモデルのために多くの労力が割かれ、とても立派なカタログが作られ、メディアに対するお披露目イベントも実施された。それでも各3台の販売に留められるのはどんな理由からなのだろう?

「これほど特別な仕様となると、価値観がピタッとはまる人はそう多くないのです。しかし、BMW Individualが提供するビスポーク・サービス自体の需要はとても伸びています。『京都エディション』が出てから、その車体色である特別色アズライト・ブラックの注文が大幅に伸びたり、Mモデルにあえてクロームのウィンドーモールディングを組み合わせる要望があったり、そういう側面で売り上げに貢献しているのは事実です」

インテリアに重きを置く時代は来るか

加納幸の加納代表は、電動化や自動運転など自動車の世界が大きな変化を遂げる今後、高級車の世界がパワーや速さに重きを置く時代ではなくなり、インテリアをどう充実させるかに注目が集まることを期待しているという。「織物の世界では、景気が壊滅的で、職人の高齢化も顕著です。今回のように明るい話題を提供することで、発信力を高めて西陣織の技術を継承していけるようにしていきたいです」

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「BMWと日本の名匠プロジェクト」で登場した3車種の車両本体価格は2150万円、2650万円、1680万円。日本の伝統工芸を取り入れた他社の例として、レクサスが金沢のプラチナ箔や西陣織をオプションで採用した「LS EXECUTIVE」も1500万円を超える。これらを手に入れることができる人の数はきわめて限られているが、高級車の芸術性を高め、日本の伝統工芸の維持発展にも貢献する取り組みが今後、日本のみならず世界の自動車産業に広く波及することを期待したい。

田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、PARCFERME編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。近著に「奥山清行 デザイン全史」(新潮社)。モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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