BMWアルピナがタイヤ・ホイールの設定を絞る訳

歴史から見えてくる車両機能の絶妙なバランス

能力を極限にまで発揮するには個別に高性能化するだけでは不十分(写真:ニコルオートモビルズ合同会社)

絶対的な性能において高い水準を達成しながら、優れた工業製品ゆえの上質感を操る人に伝えようという姿勢を具現したBMWアルピナB3。日本カー・オブ・ザ・イヤーとジャーマン・カー・オブ・ザ・イヤーという2つの団体から「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」として評価された。その独自の世界観はどのように醸成されていったのか。

『アルピナB3』高性能なのに快適すぎる車の正体」(2021年1月31日配信)に続いて、今回はBMWアルピナの歴史を振り返りつつ紹介していこう。

BMWディーラーで保証をつけて販売

BMWアルピナの製造元であるアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社は1965年、ドイツ・ミュンヘンの西70kmほどにあるブッフローエ(Buchloe)に設立された。

1962年に登場したBMW 3シリーズの祖先といえる小型セダンで、“ノイエ・クラッセ”と呼ばれる「BMW 1500」のエンジンをパワーアップする「アルピナ・ユニット」を発売したところ、その内容がBMWドイツ本社にも高く評価され、BMWディーラーにおいて保証をつけて販売されるようになった。

(写真:ニコルオートモビルズ合同会社)

当時のBMWは年産15万台程度の小さなメーカーながら、実用的なコンパクトセダンに高性能エンジンを詰め込んでツーリングカー・レースで活躍することなどで人気を高めており、アルピナもニキ・ラウダやジェームズ・ハントといったF1ドライバーを起用した自らのレーシング・チームで好成績を挙げ、名声を高めていった。

基本性能に優れるBMWの能力を極限まで発揮させるには、エンジンやサスペンションを個別に高性能化するだけでは不十分で、車両の機能全般がバランスよく調和しなければならない。このことに加えて、創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンにとっての夢は「自動車メーカーになること」であった。

1970年代前半、耐久レースで“勝てる”マシーンを提供していたアルピナのツーリングカーレースにはF1ドライバーも乗った。3.0CSLを駆るのは当時現役バリバリのF1チャンピオン、ニキ・ラウダだ(写真:ニコルオートモビルズ合同会社)

これらが結実して、1978年にアルピナは300馬力を発揮する世界最速セダン「B7ターボ」を筆頭に、BMWの基本構造を利用しながら車両全体をチューニングした“コンプリート・カー”を発売。1981年にはドイツ政府自動車局から独立した自動車メーカーとしての認定を受けるに至っている。

その後、BMW自体が高性能化とあわせて高級化を図っていくのに従い、アルピナも内外装のオーダーメイドを中心としたラグジュアリー路線を追求していった。

1980年代終わりからモータースポーツの世界から遠ざかっていたが、アルピナのDNAからレーシング・スピリットが消えることはなく、2009年に耐久レースの世界に戻ってきたアルピナは、2011年にADAC(ドイツ自動車連盟)GTマスターズ選手権でシリーズ・チャンピオンの獲得に成功した。

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