菅首相、引き際の言動で問われる「宰相の矜持」 ポスト菅選びへ積極関与、にじむ退任後の野望

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宣言解除については「週明けによく分析した上で判断したい」と述べるにとどめたが、政府側は27日中に全面的解除の方針決定を前提に、28日の国会報告と対策本部開催を与党に伝えている。

さらに菅首相は、今回訪米の最重要課題だった日米豪印首脳会合について「気候変動で議論をリードし、3人の首脳から賛同の意が示された」と力説。一連の首脳外交のやり取りも例示し、菅外交の成果を誇示した。

一方、記者団は「次期首相に入閣を要請されたら受ける考えはあるのか」「今後、派閥をつくる考えはあるか」といった質問を浴びせた。菅首相は「仮定の話になるが、(入閣を)受ける気持ちはまったくない」と明言。「私自身が取り組んできた政策的な仕事をしたい」と吹っ切れた表情で語った。

総裁選候補者に目立つ実力者への「忖度」

第2次安倍政権発足以来、菅政権も含めて約9年間、安倍・菅一強体制と呼ばれる強権的な政治が続いてきた。今回の総裁選やそれに続く衆院選で問われているのは、「それを許してきた自民党の体質そのもの」(自民長老)とみられている。

にもかかわらず、総裁選で三つ巴の戦いを演じている河野、岸田、高市3氏の言動には、総裁選を通じてキングメーカーの座を争う安倍、麻生、二階、菅の4実力者へのさまざまな「忖度」が際立つ。

戦いの構図が「安倍・麻生VS二階・菅」と喧伝されること自体が「自民党にとってマイナス」(若手)なのに、自主投票を求めて若手衆院議員が結成した党風一新の会も、「総裁選終盤になると派閥の多数派工作に飲み込まれている」(同)ようにもみえる。

安倍、麻生、二階3氏と違って菅首相は無派閥で宰相の座に上り詰めた異形の実力者だ。だからこそ、自らが引き立ててきた河野氏を支持し、後継者にすることが「退任後の影響力確保への唯一の道」(自民幹部)であることは間違いない。

総裁選の結果が出るまであと2日。今回の菅氏の賭けが「吉と出るか凶と出るかはなお流動的」(自民幹部)だ。ただ、岸田氏や高市氏が勝てば「安倍院政」、河野氏が勝てば「菅院政」と騒がれること自体が今回の総裁選の歪みを象徴している。

永田町ではすでに「誰が新総裁になっても11月衆院選後や来夏の参院選に向けた政局混乱は必至」とみる向きが多い。総裁選後の自民党内の権力闘争にも絡み、菅首相の退任後の動きも注目され続けそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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