菅首相、引き際の言動で問われる「宰相の矜持」

ポスト菅選びへ積極関与、にじむ退任後の野望

訪米し、首都ワシントンでアメリカのハリス副大統領(右)と懇談する菅義偉首相(左)(写真:AFP=時事)

1カ月近くメディアを事実上占拠し続けている自民党総裁選を横目に、菅義偉首相が退任間際まで首脳外交などで存在をアピールし続けていることへの賛否が渦巻いている。

「『立つ鳥跡を濁さず』の格言通り、辞めていく首相は目立たず、淡々と残務処理に徹する」(閣僚経験者)のがこれまでの永田町の掟だった。しかし、菅首相は退任直前に訪米して日米首脳会談や日米豪印4カ国(クアッド)の首脳会談をこなし、菅外交の成果を誇示した。

9月28日にはコロナ対策の核心となる緊急事態宣言の全面的解除も決める。「次の内閣に負担をかけない」(周辺)との理由だが、「退任後の影響力保持が狙い」(自民幹部)との見方も相次ぎ、政界だけでなく国民の間でも菅首相のけじめのつけ方への疑問が広がっている。

後継者決定前に「お別れ会見」も

1年前の2020年9月16日、「国民のために働く内閣」を掲げて歴代3位とされる高支持率でスタートした菅政権。携帯電話料金値下げなど身近な改革から、未来を見据えた「2050年カーボンニュートラル」宣言、さらには反対論を押し切っての東京五輪・パラリンピック開催まで、「1年間で成し遂げた仕事は歴代政権以上」(官邸筋)なのは否定できない。

にもかかわらず、コロナ禍への拙劣な対応で国民の不信を買い、迫りくる衆院選を前に「菅さんでは選挙に負ける」と自民党内からダメ出しを食らい、「悪あがきの末の退陣表明を余儀なくされた」(自民長老)のが実態だ。

それにもかかわらず、総裁選が終盤戦を迎えた9月23日から26日まで菅首相は訪米し、4カ国首脳会談など極めて重要な外交行事に臨んだ。初対面から馬が合ったとされるアメリカのバイデン大統領との首脳会談では、「政権が替わっても日米関係は揺るがない」ことを世界にアピールしてみせた。

こうした動きに対し、政界やメディアからは「卒業旅行」などと揶揄する声が噴き出す一方、「最後まで仕事一筋は立派」(自民幹部)との評価も目立つ。しかも、後継者が決まる前日の28日に、専門家らの慎重論を押し切る形で緊急事態宣言の解除を決め、「お別れ会見」まで行う考えとされる。

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