菅首相、引き際の言動で問われる「宰相の矜持」 ポスト菅選びへ積極関与、にじむ退任後の野望

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最近は現職首相(総裁)が退陣表明した場合、総裁選を経て3週間前後で後継者が新政権を発足させてきた。しかし、今回は9月3日の退陣表明から10月4日の新政権発足までの移行期間が1カ月余と格段に長い。

それだけに、菅首相は党内外の批判などは承知の上で「『仕事師』が身上だから、最後までやるべきことをやる」(側近)と判断したとみられる。

今回の菅流の身の処し方の中で永田町の批判の原因となったのが、「菅後継」を目指して総裁選に挑んだ河野太郎氏への支持表明だった。総裁選が告示された9月17日、菅首相は総裁選と並行してワクチン担当をこなす河野氏について、「国難の中で大きな成果を上げてくれた。コロナ対策は継続が極めて大事だ」とあえて河野氏支持を明言した。

「河野政権での院政」狙いの声も

過去に長期政権を築いた中曽根康弘(故人)、小泉純一郎両元首相や安倍晋三前首相は、退任時も党内への強い影響力を保持しており、それぞれ後継指名を実践した。これは政界だけでなく、国民的にも実力者としての存在が認められていたからだ。

しかし、菅首相のように自らの力不足でわずか1年で退陣表明に追い込まれ、「宰相失格の烙印を押された」(閣僚経験者)にもかかわらず、後継者を決める総裁選で特定の候補に肩入れするのは「宰相としての矜持が感じられない」(首相経験者)との批判も根強い。

このため党内では「手勢を率いて二階派を継承する」「河野政権での院政狙い」などのうがった見方も飛びかう。菅首相自身は訪米終了時に、次期政権での入閣などを否定してみせたが、周辺は「裸一貫から首相にまで上り詰めただけに、まだまだ楽隠居するつもりはない」と解説する。

菅首相は訪米日程の終了を受け、帰国直前の25日夜(日本時間)にワシントンのホテルで同行記者団と懇談した。これまでの官邸での記者会見やぶら下がりインタビューの素っ気ない対応とは違い、退任後の活動も含めて饒舌に語ってみせた。

まず、帰国直後の重大判断となる緊急事態宣言の解除問題については、「状況は確実に好転している」と強調。ここにきての急激な感染減について「ワクチン接種(の進展)が大きな要因」と自らの指導力をアピールした。

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