速さや豪快さではなく、走りの質感の高さを追求した質の高いスポーツ車だといえる。軽快さの観点で誤解を恐れずいえば、マツダ「ロードスター」に通ずるものがある。
ここから本稿の本題へと移ろう。なぜ、ホンダは日本で10世代目に続き、新型シビックでも6MTを出し続けるのだろうか。その背景には、日本でのシビックの立ち位置がある。
ホンダによると、シビックは初代から10世代まで、グローバルで累計約2700万台を販売したという。
直近2020年度のグローバルでの販売数は、最も売れた中国が約25万4000台、次はアメリカでほぼ同数の約25万3000台、次いでヨーロッパが約14万台。日本は、中国やアメリカのわずか3%、約8700台にとどまる。
エリアで異なるシビックのイメージ
販売台数も大きく違えば、仕向け地それぞれで、商品性に対する捉え方が大きく違うのも、シビックの特徴だ。
たとえば、アメリカでは幅広い世代に売れており、ホンダという高いブランド価値を認識したうえで、リセールバリュー(下取り価格)も高く、故障も少なく安心して買える“安全パイ”という認識が強い。
中国では、2000年代以降の高度経済成長において、富裕層から始まり徐々に庶民層に広がったアメリカンライフスタイルへの憧れと、ホンダに対する高いブランドイメージから、「上級車」という意識を持たれている。
ヨーロッパでは、ホンダはF1を筆頭としたモータースポーツでのブランドイメージが強く、「走りがいいクルマ」というイメージが先行する。
タイなどの東南アジアでは、1サイズ大きい「アコード」と同様に「高級車」として庶民から憧れの眼差しを受ける存在だ。
では日本はというと、シビックのイメージは大きく2分されている。1つは、いまだに“大衆車”だと思い込んでいる人たちだ。
ホンダの資料では、1972年発売の初代から2000年発売の7代目までを「世界市民のベーシックカー」と位置付けている。ベーシックカーとは大衆車と同意だ。それが2005年発売の8代目からは、「ホンダを象徴するモデル」としてミドルカーに転じる。
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