ヤバい「1万円高級寿司」の裏側【前編】 ここが惜しい!ミシュラン店との「差」を徹底解説

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さばきたてがおいしいのは青魚。ワサビは醤油に溶かず、刺身の真ん中につけて食べる

河岸:次は何にしようか。(職人さんに)今日は何がいい?

職人:今日はソイがいいですね。旬ですから。

河岸:じゃあ、それとヒラメの刺身をお願い。

N君:ソイってなんですか?

河岸:北海道でとれる白身の魚。歯ごたえがコリコリしておいしいよ。

N君:そんな魚の存在さえ知りませんでした(苦笑)。う~ん、本当だ。これはヤバいおいしさですね。感激だなぁ。

河岸:うん、確かにおいしいけど、このソイはちょっと新鮮すぎるね。鮮度がよすぎて、実力ほどにはおいしくない。

N君:は? 鮮度がよすぎておいしくない? 何を言ってるんですか、刺身は新鮮なら新鮮なほどおいしいんじゃないですか?

河岸:そんなことない。魚というのは、しめてから熟成が始まるから、しめた直後はおいしくないの。タンパク質から「グルタミン酸」、ATP(アデノシン三リン酸)から「イノシン酸」といったうまみ成分が生まれてくるから。熟成の時間は魚によって違うけど、どんなに早い魚でも半日はかかる。しめたてがおいしいのは、イワシやアジなんかの青魚ぐらい。タイやヒラメ、カンパチなんかの白身魚は、しめたてより熟成させたほうがおいしい。

N君:え、じゃあよく、店内で生け簀(いけす)からすくって、その場でさばいて食べさせてくれる活け造りは?

河岸:活け造りは食感がコリコリして、それが青魚ならおいしいけど、白身魚ならばいちばんおいしい食べ方ではないよね。生け簀からすくってきたのをさばくのは一種のパフォーマンスと考えたほうがいい。それに、そもそも生け簀の魚はおいしくないよ。

N君:えっ? 直前まで泳いでいるから、おいしいのでは? 

河岸:だいたいの店では、生け簀の魚にエサをやらないからね。すぐさばいて食べるし、エサを入れると水が濁っちゃって管理が面倒だから。

N君:魚ってエサを食べないと、そんなに味が落ちるんですか?

河岸:もちろん。1日食べないだけでも、やせておいしくなくなっちゃう。

N君:なるほど。時々、店の人が鈴を鳴らして「今からさばきますよ」というのは、青魚か白身魚か見極めないといけないわけですね。なんか寿司通になった気がするなぁ~。

河岸:まあ、でも、そんなレベル以前に、刺身を食べるときは、君みたいにワサビを醤油にそんなに溶かして食べたらダメだよ(苦笑)。ワサビは刺身につけて食べるものだから。

N君:えっ? 醤油にワサビを溶かしたらダメなんですか?

河岸:そんなことをしたら、ワサビの風味も、刺身の味もわからなくなるでしょう。ワサビ特有の鼻にツンと来る刺激もなくなってしまうし。見た目もきれいじゃないしね。もちろん好き好きではあるけど、刺身のおいしい食べ方ではないよね。

N君:そうでしたか……。じゃあ、こうやって端っこにワサビをつけて食べるんですか?

河岸:ワサビは刺身の端じゃなくて、真ん中につけるの。ワサビを真ん中につけた刺身を箸で折りたたんで、醤油を少しつけて食べる。そもそも寿司だって、ワサビは真ん中についているじゃない。

N君:言われてみれば、そうですね……。「ワサビは醤油に溶かさず、刺身の中央につけて食べる」。これでまたひとつ学習しました!

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