勝ち組は次々にマンションを購入 中国不動産バブルの勝ち組、負け組(後編)

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最初は風呂トイレ共同の部屋だった

――郭さんの話を聞いていると、少し頑張ればたくさん不動産を持てそうな気がしてきますが、私の周囲でそこまで買っている人はいません。

私にはどうしてもそうせざるをえない事情があったから。私は1989年に離婚し、1歳の子供を独りで育てなくてはならなかった。両親に経済的負担はかけられなかったし、実家は狭く、兄夫婦が同居していたので、私たち母子が出戻ることもできなかった。

それで私は職場から支給された「筒子楼」という、風呂トイレ台所が共同の寮のようなところに住んでいた。あるとき、洗い物をするため、子供を部屋に置いて、水場に行くと、私の姿が見えなくなった子供が突然、大声で泣き始めた。それを聞いて、本当に心が張り裂けそうだった。

その頃、大学時代の同級生が両親にマイホームを買ってもらった。彼女の親は政府高官で家も裕福だった。どれだけうらやましかったか。いつか絶対、独立したトイレと台所のある家を買おうと、それが私の夢になった。

でもそもそも月給2000~3000元では、子供すら育てられない。そこで専門分野を生かして、骨董の本の執筆を請け負い始めた。骨董ブームで、1冊書くと原稿料は2万8000元くらいになった。これを何冊か手掛けることで、生活費を稼ぎながら、マンションの頭金を貯めることができた。

同時に職場のほうでは報告書を山ほど書いて、ようやく、単独の部屋を支給してもらえることになった。あなたも来たことがあるあの2DKの古いマンションよ。私が今、たくさんマンションを買っているのは、あのときの体験があるからだと思う。今、この国で、資産を増やすとしたら、不動産ほど最適なものはないわ。

――そうは言っても、一般のサラリーマンで不動産投資にまで手が回る人はあまりいません。それどころか1軒目をなんとか買ったはいいけれど、ローン地獄に落ちるという話が社会問題にもなっています。

これは中国人のよくないところだと思うのだけれど、多くの人が家を買うなら市内の場所がいいところとか、100平方メートル以上の広い部屋とか、とにかく人に見せて「面子(メンツ)」の立つ物件を買おうと考える。彼らはまるで自慢するために家を買うみたい。そうなると価格は高くなり、ローンの返済に苦しむことになる。

それは車でも同じ。中国人は見栄えのよい外車を買おうとする。でも私は、マンションも車も実用第一。

――小さな国産車に、10年以上乗っていましたね。

夏利(シャーリー)に15年乗った。夏利にしたのは、当時、北京市のタクシーに採用されていた車種で、国産の中では信頼性が高かったから。家も同じ。まずは徒歩圏内に地下鉄駅のある新興住宅地で、40平方メートルくらいの小ぶりの物件を、まだ開発が始まったばかりのときに底値で買う。小ぶりの物件は、賃貸に出したときの利回りもよいわ。

私は新築マンションでいい物件があったとき、必ず周囲に声をかけるようにしている。そうしたらみんなでリッチになれるでしょう。多いときは7~8人のグループで、一緒に買いに行くんだけれど、2軒目、3軒目を買った人でもそれ以上になると、まあこのへんでよいかというふうになる。

中国の新築マンションは一から内装をして家具もそろえなければいけないので大変だし、人に貸すのも面倒だから。でも私はその手間をいとわない。それも大事だと思う。

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