原発訴訟で国と東電の責任を裏付ける文書 存在を確認できないはずの重要資料が白日に
原子力発電所事故をめぐる損害賠償訴訟(「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟)で、被告の国がこれまで「存在を確認できない」としてきた、重大事故の可能性を示唆する資料が明るみに出た。
福島地方裁判所での口頭弁論を翌日に控えた7月14日夕、国は「上申書」と「訂正書」を急遽提出。「原告の主張する文書そのものではないものの、原子力規制庁に電力会社から提出されたと認められる資料があることを確認した」として、これまでの「存在を確認できない」との説明を撤回した。
国が提出した上申書には、裁判の帰趨にも影響を与えかねない、驚くべき内容の資料が添付されていたのである。
「余裕のない状態」を認めていた
「『太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査』への対応について」と題した文書の作成日時は「平成9(1997)年7月25日」。作成者は「津波対応WG」。電気事業連合会が設置したと思われる組織による同資料には、次のような記述がある(写真参照)。
「(97年)5月26日に実施された太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査委員会(以下、四省庁委員会)の検討資料に基づき、太平洋側の原子力地点での津波高さの検討を行った」
「その結果、四省庁資料から読み取った津波高さは、福島第一、福島第二および東海第二のそれぞれの発電所において、冷却水取水ポンプモータのレベルを超える数値となっている」
「また、四省庁委員会が設定した想定地震の断層パラメータ(相似則による平均値)を用い、電力独自に数値解析した結果、福島第一、福島第二、東海第二、浜岡ともに、余裕のない状況となっている」
「以上のような状況下において、四省庁委員会が設定した想定地震の断層パラメータのバラツキおよび計算誤差を考慮して、仮に上記値の2倍の津波高さの変動があるものとすると、太平洋側のほとんどの原子力地点においては、低下水位は冷却水取水ポンプ吸込口レベル以下となるとともに、水位上昇によって冷却水取水ポンプモータが浸水することとなる」
海水を冷却水として取り込むポンプが浸水した場合、炉心損傷や最悪の場合に炉心溶融に至り、大規模な放射性物質の放出につながりうることは、「国会事故調」(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書(2012年7月)で詳しく述べられている。この文書の記述から、11年3月に福島第一原発で起きた事態を想起させる重大事故の可能性を、東電を含む電力会社が97年7月時点で認識していたことをうかがわせる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら