日本企業で成果に見合う給料を払おうとする人事評価を採り入れるトレンドは、今で2回目。過去に『成果主義』という言葉が独り歩きして、会社が猛烈な批判を受けたことがありました。それは、時代をさかのぼること20年前。1990年代に製造業・総合商社などで
《わが社は実力本位の企業文化の構築を目指す》
と宣言する会社が登場。第1次成果主義ブームが到来しました。当方が社会人になりたての時期のことです。売り上げ、利益、収益改善など目に見えやすい成果を目標に掲げて、その成果に応じて給与が変わる仕組みが各社で導入されたのです。結果として成果の違いで年収にして数百万円の格差が生まれるように仕立てたのですが、タイミング悪く円高などで業績低迷が続き、
「成果主義は短期的な視点の仕事を強要させ、会社をダメにする」
とか、会社の風土を破壊するとか…とにかく、社内外から批判の矢面にさらされました(ある意味、残念な話。その理由は後述します)。
それを象徴するような著作『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』がベストセラーになったりして、時代のあだ花として世間に記憶されることになってしまいました。そうして、成果主義を廃止して、年功序列に回帰した会社もあったようです。
第2次ブームは、ある種強引な「メリハリ」路線
とはいえ、です。今の日本企業に、年功序列で成果に関係なく給料を支払える体力は残っていません。成果主義は、周囲の批判をかわすように別のマイルドな言い回しで置き換えられて、着々と広がっていました。まさに第2次ブーム。それは、
《メリハリをつける》
ちなみにメリハリの語源は「メリカリ」で、低い音と高い音のこと。つまり差をつける、ケジメをつけるなどを意味します。人事評価で《S・A・B・C・D》と5段階の査定指標があるのにBばかりに中心化している会社が大半ですが、それを
「B評価は全体の30%まで。S評価とD評価を全体で5%以上にすること」
と強引にでも格差をつける人事評価、これがメリハリ系です。結果として定期昇給や役職の抜擢で差が大きくなります。広義で考えれば成果主義と同じとも言える施策です。そんなメリハリをつけた人事評価がドンドン職場に浸透しつつあります。たとえば、取材したシステム開発会社は
《競争に勝ち残るためには社内にも競争が必要。だから、メリハリのある人事評価制度を導入することを決断しました》
と社長が熱く語ってくれました。この会社は年功序列の昇給システムであったため、人件費が肥大化。その対策としてメリハリのある制度導入は必須であったようです。メリハリには
裏の意図:総人件費の抑制
という両面の意図があるのです。こうした人事評価は社員の士気にもメリハリが出る覚悟が必要となります。成果の出ない社員は給料が下がり、当然ながら意欲も下がり、退職するケースも増えます。ただ、成果を出した社員が意欲的に仕事をすることで目的は達成できると踏んでのこと。
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