45歳定年制に憤る人に知ってほしい働き方の現実 私たちは70歳までのキャリアをどう描けばいいか

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三菱商事→ローソン→サントリーホールディングスと渡り歩いてきた新浪剛史氏(写真:Shiho Fukada/Bloomberg)

サントリーホールディングスの新浪剛史社長が9月9日に開かれた経済同友会のオンラインセミナーで導入を提言した「45歳定年制」が大きな波紋を呼びました。

批判が巻き起こり新浪社長が釈明する事態に

新浪社長は「会社に頼らない姿勢が必要だ」と述べましたが、これについて「単なるリストラではないか」とか「45歳で転職できる人など限られている」「人件費を抑えたいだけ」「雇われる側としては不安になる」などの批判が巻き起こり、翌日の記者会見で新浪社長が釈明する事態となりました。

社会的影響力の強い人の発言だけに政府もすぐに「国としては70歳まで企業に雇用を義務づける方向でお願いしている」(加藤勝信官房長官)と火消しに動きました。発言の一部分をセンセーショナルに報じられた面があるとしても、さまざまな社会的な情勢を踏まえると言葉の選び方、伝え方などにおいて、強い批判を浴びても仕方のない言動だったことも否めません。

ただし、擁護できる部分がないわけでもありません。「45歳定年制」の発言は経済同友会の集まりで「日本経済を発展させるにはどうすればよいか?」について議論をする場で新浪社長が出したアイデアです。

もし「45歳定年制」があれば、20代・30代の若者はもっと真剣に勉強するはずだというのが新浪社長の主張でした。確かに入社時点において途中でキャリアチェンジをしなければいけないとわかっていたら、20代のうちにAIの勉強をしようとか、30代のうちに中国語を学んでおこうとかスキルアップの準備をもっと真剣に行うというモチベーションにつながるかもしれません。

大企業に入社した人材も自分が幹部人材候補だという自認があればあるほど、「45歳定年制」を意識してそのうちのかなりの人数が海外のMBA留学に向かう可能性もあるでしょう。MBA自体がいいかどうかという議論はさておき、過去30年間の日本企業の凋落と、日本人がアジア人の中でもグローバリゼーションから遅れていることには一定の関係はあるわけです。

中国だけでなくシンガポール、タイ、インドネシアなどアジアの企業の若手幹部社員がグローバルビジネスのアイデアをどんどん出し、それぞれの国の企業がグローバルに発展している現状を見ると、新浪社長の問題提起は日本の経済界に一石を投じた面はあると思います。

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