筆者は、かつて同社の日本法人(何とヴァンガード社は8月末に日本から撤退した! なぜだ?)に勤めていた知り合いに事情を聞いてみた。彼女はアメリカの本社に事情を聞いてみてくれたらしいのだが、以下のような答えが返ってきた。
「アメリカではファイナンシャルアドバイザー経由で個人にファンドを売るチャネルが発達している。この販路にあって、VTは、これを紹介すると、顧客の運用がこれ1本で完成してしまうので、アドバイザーの仕事がなくなってしまう。なので、アメリカの大型株、小型株、海外先進国株、新興国株などの組み合わせにアドバイザーの人気が向かっていて、VTの資産残高は意外に伸びていない」。
アメリカ株投資の手段はETFか、個別株式か?
さて、1択なら全世界株の方がいいとしても、投資の一部として、アメリカ株に少し深入りしてみたいと思う読者もおられよう。この場合、ETFがいいか、個別株式がいいか。
『週刊東洋経済』の特集記事(54~57ページ)を見ていただきたいが、アメリカでは、広範囲に投資するインデックスに連動するETFに加えて、「ナスダック銘柄」「バイオ関連企業」「フィンテック関連」「クラウド関連」」「高配当株」など、さまざまなカテゴリーに投資するテーマファンド的なETFが多数上場されている。
広範囲に投資されるETFの経費率が軒並み0.1%を下回るような状況なので、普通の投資家にとって、あるいは一般論として、長期投資で考えるなら(例えばバフェット氏が妻に遺産を渡すような場合は)、広範囲に投資する市場平均的なインデックスETFのほうがいいことはほとんど自明だ。
各種のテーマ型ETFは、経費率が0.3~0.8%くらいに設定されている。アメリカの運用会社も、平均に投資するインデックス運用が有利だとわかってはいても、何らかの特徴を持たせた商品で「もう少し手数料を稼ぎたい」という事情があるのだろう。信託報酬が1.5%を超えるような日本の公募投信のテーマ型ファンドよりは控えめでマシだが、売り手側の意図と事情は同じだろう。
ついでに1つ指摘しておくと、ETFにしても個別株にしても、配当利回りで銘柄を選ぶのは「逆張りのヒント」として面白いことがあるが、アメリカ株投資への課税の仕組みを考えた場合に有利とは言いがたいので注意したほうがいい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら