(第20回)外需依存に関する政治経済学的バイアス

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 90年代になってから、税収は傾向的な落ち込みをみせていた。所得税は、91年に26・7兆円を記録したのち、92年には23・2兆円となり、95年以降は20兆円を割り込んだ。法人税は、89年に19兆円のピークを経験してから落ち込み、93年には12・1兆円になっていた。税収の確保は、当時の大蔵省(01年からは財務省)にとって、最重要かつ緊急の課題であったはずだ。

為替介入によって企業利益が回復したため、落ち込んでいた法人税収は、96年には14・5兆円まで回復した。こうして、為替介入は税収を増加させる効果的な手段であることが認識されたはずだ。

しかも、財務省からみれば、円安政策は、「財政支出を必要としない」という意味で「コストがかからない」政策である。

景気刺激のために公共事業を増加させれば、コストがかかる(財政赤字が拡大する)。公共事業以外でも、財政支出を伴う政策は、コストがかかる。他方で、増税や歳出カットは赤字を縮小させるが、経済にマイナスの影響を与える。97年に行われた消費税の税率引き上げは、税収増をもたらしたが、経済を失速させたと批判された。しかし、円安であれば、誰も反対しない。以上の意味で、円安介入は理想的な税収増加手段だとみなされた可能性がある。

財政赤字解消に寄与したかどうかは、財務省における昇進の重要な基準だ。公共事業を増やして赤字を拡大した人が偉くなるわけではない。トップにのぼり詰めるのは、税収増加や歳出削減に貢献した人たちだ。為替介入で法人税が増えるとなれば、介入のノウハウを持つ人は財務省での昇進の切符を得たことになる。

日本経済の進路を決める実質的に重要な経済政策は、国会や政治とは無関係に、財政テクノクラート(経済テクノクラートではない)によって決められる。高度成長期もそうだったが、このときもそうだった。

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