電通本社ビル、ヒューリックらが取得で合意へ SPCを組成、売却総額は過去最大の3000億円規模

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収益物件の売却が牽引し、今2021年12月期も過去最高純益を見込むヒューリックだが、同社は中期的には不動産賃貸利益の拡大を志向する。6月末時点で営業利益の45%にとどまる賃貸物件から上がる利益を、2029年までに65~70%に伸ばす方針だ。銀行店舗跡地などの再開発ビルを順次竣工させ、賃料収入を積み増すほか、既存ビルの取得も加速させる。

電通本社ビルの取得はその一環であり、当面は転売せず賃貸収入を享受する見通しだ。ただ、3000億円規模の物件をヒューリックが丸抱えすることは財務負担が重いため、SPCへの出資という形式を採用したとみられる。

電通は本社ビル売却後もリースバック形式で11年間の賃貸借契約を結ぶが、賃借するオフィスは一部縮小する予定で、発生する空室では後継テナントが募集されることになる。

自社ビル仕様が賃貸のハードルに?

汐留エリアでは大口テナントの退去によって、オフィス空室が目立っている。近隣の「東京汐留ビルディング」では、本社を構えていたソフトバンクグループが2021年1月に移転したことで、約2.5万坪もの空室が発生した。現在でも約半分のフロアでテナントを募集中で、入居テナントが決まった区画の成約賃料もコロナ禍以前ほどの強気な水準ではないようだ。

東京汐留ビルディングの裏手に立つ「日本通運本社ビル」でも、日本通運が2021年9月に東京・千代田区の新本社に移転を計画しており、延べ床面積約1.5万坪もの空室が出る見込みだ。

電通の本社ビルは自社ビルならではの独特な形状が特徴的だ(撮影:尾形文繁)

立地エリアの市況に加え、電通本社ビルのテナント募集に当たっては自社ビル独特の形状も障壁となりそうだ。

上空から見るとブーメランのような形状をしている電通本社ビルは、通常の賃貸ビルと比較して延べ床面積に占める賃貸面積の割合が少ない。複数テナントに賃貸することを前提としていない自社ビルは、テナントごとのフロア分割や共用部の増設、動線作りが課題となる。

前出の日本通運本社ビルも当初は賃貸ビルとしての運用が予定され、一時期は日通退去後のテナントを募集していた。だが「自社ビル仕様であることが嫌気され、テナントが付かなかった」(都内のオフィス仲介会社)。ビルはその後売却される方針に切り替わったとみられ、2021年7月までに入札が実施された。不動産会社など複数社が応札し、買い手企業の選定で最終調整が進んでいる。

オフィス需要の先行きには不透明感が漂う。それでも、空室の増加を懸念する国内外の不動産投資家は少なく、物件価格は高値圏で推移している。コロナ禍でも強気な企業とそうでない企業の優勝劣敗が明らかになるのはこれからだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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