子牛価格の高騰に農家が悲鳴、口蹄疫が残したつめ跡
宮崎県での感染確認から3カ月。口蹄疫の影響は全国へと広がりつつある。
4月以降、全国の取り扱い頭数6割を占める九州・沖縄の肉用子牛市場は、ほとんどが休止したままだ。農畜産業振興機構によると、5月の子牛取引頭数は前年同月比で6割以上も減少し、1万3000頭まで落ち込んだ。一方、価格は9%上昇している。
国産牛肉の大半は、子牛専門の農家が1年間成育させた後、肥育農家が仕入れて約2年間育てた後に出荷される。子牛が手に入らなければ生産・出荷サイクルが狂い、将来の収入減に直結する。このため東北や北海道など、以前は買い付けなかった地域へと足を運ぶ農家も増えている。
松坂牛産地の三重県で肥育農家を営む瀬古清史さん(60)も、6月に初めて北海道で子牛を買い付けた。「これまで1頭35万~40万円だったが、47万円程度に上がっていた」。52頭を買い付けた結果、費用は約400万円上昇したという。
同じ三重県のJAいがほくぶでも、6月に組合員の要請を受けて岩手へ買い付けに出向いた。しかし価格高騰により、17頭の注文に対して2頭の購入にとどまった。
価格高騰の背景には、国産牛肉特有の生産方法も影響している。血統によって気性や飼料の分量、肉質などの条件が変わるため、農家は育ててきた種牛の系統にこだわる。北海道、東北の子牛市場では、宮崎の種牛系統の子牛に人気が集中したという。