「マウンティング中毒」から抜け出せない根本理由 エゴは「自分が何者か」をわからなくしてしまう

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他者に見せる表向きの顔(ペルソナ)には、ありのままの自分と、こうなりたいと思っている自分、こう見られたいと思っている自分、さらには、そのときの感情が入り混じっている。

家に1人きりでいるときの自分と、世間に見せるときの自分とではバージョンが違う。違うといっても、公的バージョンのほうが、優しさや寛大さを発揮するために、より努力を要する、という程度の違いならいい。

ところが、そこへエゴが割り込んでくるから厄介なことになる。自信のない人間は、いかに自分が特別な存在であるかを自他に納得させずにはいられない。

そこで、実際よりも知識が豊富で、優秀で、自信にあふれた人間であるかのように自分を偽るようになる。大きく膨らませた自分をさも実物であるかのように提示し、偽りの自己を守ることに躍起になってしまう。

4世紀に生きた、キリスト教の修道者ポントスのエヴァグリオス(またの名を「孤高のエヴァグリオス」。僧侶や修道士は時として、かっこいい別名をもらうものだ)の著書にも、虚栄心とは「魂を堕落させる最大の原因」と書かれている。

自信のない人は自分をよく見せようとする

虚栄心とエゴは仲がいい。人は自分をよく見せるために、途方もない労力を費やしている。僕らが服装や身だしなみを整えるのは、それが快適だからであり、適切と感じられるからだ(すでに話したとおり、自分にとっての定番、つまり「ユニフォーム」的なものをそろえておくと、服選びに苦労しない)。それに当然、人にはそれぞれ、特定の色やスタイルの好みがある。

ところが、エゴはそれだけでは満足しない。エゴは他人の注目を集めようとする。反響や賞賛を期待する。人に感心されるたびに、自信を強め、喜びを感じる。

ちなみに、インターネットで拡散された有名な画像をご存じだろうか。投資家ウォーレン・バフェットとマイクロソフト創業者ビル・ゲイツがラフな格好で並ぶツーショット写真には、こんなタイトルが添えられている。「2人で総資産価値1620億ドル。でもグッチのベルトはどこにも見当たらない」。

僕はグッチを批判しているわけじゃない。僕が言いたいのは、ありのままの自分に満足している人は、自分の価値をとくに証明しようとする必要がないということだ。

ありのままの自分と表向きの自分の違いを知るためには、1人きりのとき、自分がどんな選択をするかを考えてみればいい。誰からも批判されず、誰かを喜ばせる必要もないとき、きみはどんな選択をするだろう。

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