「マイナースポーツの詰め合わせ」に見える光明 テクノロジーが「競技を取り巻く環境」を変える

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判定システムとしてではなく、競技の要素としてチャレンジ権と判定のビジュアライズなどが加わり、スポーツ観戦の娯楽性を高めている「ホークアイ」(写真:ソニー)

テニス向けの応用ではその後、サーブがコートのどの位置でバウンドしたのかをビジュアライズするなどの観戦用サービス機能が追加されたが、そもそもホークアイが判定システムではないというのは、こうした部分だ。

ソニーがこの技術を買収した際に取材したことがあったが、買収した一番の目的は、世界中の大規模スタジアムが複合商業施設になっていく中、Felicaなどの技術を使った決済や電子チケットなどのソリューション、あるいはホークアイで取得したデータをビジュアライズして会場内のディスプレーで演出しながら見せることが目的だったと話していた。

大谷翔平選手の活躍が連日伝えられるアメリカ・MLBも、打球速度や打ち上げ角度、推定飛距離などに加え、投手が投げた球の軌道や速度などがリアルタイムで表されるようになるなど野球観戦に深みや議論をもたらすデータを積極的に提供している。

メジャースポーツも環境の変化に追従していかなければ観客の支持を得られなくなり、結果として規模を小さくしていくことになる。こうした「スタッツ」(競技に関連したパフォーマンスを示す数値などの総称)を積極的にフィーチャーした観戦スタイルを狙っているのは、エンターテインメント性を少しでも上げたいという意思があるからだ。

マイナーから脱出する「一歩」

マイナー競技が一夜にしてメジャーになる、ということはおそらくない。ルールの周知に始まり、何が競技性を担保しているのか、どのように観戦すると興味を持続できるのか。競技を楽しむプレーヤーだけではなく、それを観戦する側にもある程度の知識が必要になるからだ。

例えば筆者はブラジリアン柔術という、日本では3~4万人程度という競技人口のスポーツを趣味にしている。極めて戦略的で適応できる年齢幅も広く、筋力が弱くとも技と身体の使い方で楽しめる格闘技だが、ルールや競技性を決めているポイントを理解していないと、動きが少なく面白さのポイントが見えてこない。

マイナースポーツがマイナーな理由を「わかりにくさ」と「観戦しにくさ」とするならば、ブラジリアン柔術の場合は「わかりにくさ」や「試合展開が膠着しやすい」ことなどが、もっとも大きなハードルだ。

しかし一方で、達人クラスの柔術家が(道着を着ないNOGIというルールなど)条件を変えて戦うと、素人目にもわかるほど驚きの展開が起きることもある。競技をより深く理解したうえでそれがテクノロジーに結びつけば、面白さの認知が一気に広がることもあるだろう。「驚き」や「畏敬」を感じてもらうことは、マイナー競技が“マイナーな存在”から脱出できる第一歩だ。

ちなみにブラジリアン柔術は、おそらく日本とフランスを除けば、柔道よりも競技人口が多い格闘技と言われている。観戦スタイルの進化やルールなどの設定、あるいはわかりやすさへの工夫などが環境の変化で改善されれば、市場が動く可能性は決して低くはない。これはどんな競技でも言えることだ。

マイナーとメジャーの間には、実は壁など存在しないのかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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