「マイナースポーツの詰め合わせ」に見える光明 テクノロジーが「競技を取り巻く環境」を変える

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T2卓球リーグは歴史が浅いこともあり、他のプロスポーツリーグほど大きな経済圏を形成しているわけではない。しかし、卓球というスポーツをエキサイティングだと視聴者が感じられるような工夫を施しているところに、新しい取り組みを感じる。

この視点は、昨今のeスポーツ人気とも並べて評価できるだろう。

旧来のスポーツ観戦は、現実のスタジアムで躍動する選手たちの活躍やチーム戦略を楽しむものだが、eスポーツは(もちろんプレーヤーの表情や様子は窺えるものの)プレイしている様子に肉体的な躍動が垣間見えるわけではなく、スタジアムを沸かせるダイナミックな展開がフィールドに広がるわけでもない。

しかし、操作するプレーヤーとゲーム画面がリンクし、映像配信と組み合わせることでエンターテインメントとして、ドラマを描き、視聴者がそのストーリーを楽しむことができる。

卓球に話を戻すと、このスポーツは人口が多い中国で絶大な人気があり、ご存じのとおり中国ではプロ化されている。卓球を中国以外の地域に広げにくい最も大きな理由は、コートサイズが小さく、大きなスタジアムでの観戦に向いていないことだったという。

そこでリアリティショーライクに演出したドラマ仕立てでリーグを楽しめるようにした。映像配信が中心ならば、会場の大きさや観戦できる観客数などの数字はあまり大きな意味を持たない。

あくまで将来性という意味で言うならば、超小型カメラをコート内やネット周辺に設置したり、カメラアングルの切り替えをマルチストリームで自在に行えるなどの工夫を行うことで、むしろ生観戦よりも卓球を楽しめるようになる可能性もあるだろう。

小さなコートの上での素早い球の動きと大きなボールの変化軌道がビジュアル化されれば、その達人的なテクニックと驚異的な反応速度、回転を駆使したテクニックでの攻防がさらに理解されやすくなるはずだ。

テクノロジーが観戦を変えた例

少し目線を外してみると、既存のプロスポーツにもテクノロジーによる事業環境の変化は起きている。現在はソニーグループ傘下にある英ベンチャーの技術「ホークアイ」は高精度のボール軌道計測をビデオカメラで行う仕組みだが、テニスのボール判定にエンターテインメント性を加えた。

単にボールのイン、アウトを判定するだけではなく、そこにチャレンジシステムを加えたことで試合のドラマにアクセントが加わり、判定をアニメーションで伝えることで観客の目を引いた。

ちなみにホークアイが最初に応用されたプロスポーツは英国とインドで人気のクリケット。数時間にわたる試合になることも珍しくないクリケットを、より分析的に楽しめるようボール軌道を記録し、ウェブやアプリで振り返りつつ、データを分析しながら試合観戦を楽しめるようにした。このサービスは有料会員向けに提供され、英国、インドで多くのユーザーを獲得しているという。

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