「マイナースポーツの詰め合わせ」に見える光明 テクノロジーが「競技を取り巻く環境」を変える
「マイナーなスポーツであることは確かだが、詰め合わせではなく“宝石箱”と言えばよかったのに」という意見が、筆者のSNSアカウントに寄せられた。競技に真摯に取り組むアスリートへの配慮は必要に違いない。
ここで筆者が興味を持ったのは、コメンテーターの意図はともかくマイナーとメジャーを評価する尺度とはどんなものなのだろうかということだ。
仮に世界的な競技人口ということであれば、メジャースポーツと認識されているのにメジャーとは言えないスポーツもある。代表例は野球だろう。プロ化されている国ではメジャースポーツと認知されているが、普及していない地域も多くグローバルで言えばサッカーの足元にも及ばない。東京オリンピックに参加したチームはわずか6チームだ。
マイナーかメジャーか、各国ごとに異なるとも言えるが、そもそも両者を分かつのは競技人口ではなく、「主に商業的な意味での経済規模の大きさ」が評価基準と言える。
「競技を取り巻く経済規模」は環境で変化する
手っ取り早く経済規模を拡大する方法は“観客を動員する”ことだ。そのためにはプロ化が効果的なことは言うまでもなく、日本ではJリーグの設立でサッカーが一気にメジャー化した。
スポーツ大国・アメリカでは野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケーなどが人気だが、いずれも観戦するファンコミュニティを中心としたプロ化を成功させている。
チケット売り上げなど興行的な側面を取り除いたとしても、プロスポーツとしての存在感はアマチュアプレーヤーの増加、関連グッズの売り上げにつながり、市場規模が連鎖的に大きくなっていく。メディアでの露出が多くなれば、一流選手たちのプレイを目にすることで「競技に挑戦してみたい」という次世代のプロ選手の呼び水にもなるだろう。
しかし、かつて商業的な成功は望めなかった競技でも、市場環境の変化やテクノロジーの変化でメジャーへの道を歩み始める可能性もある。例えば「T2卓球リーグ」というフォーマットをご存じだろうか。
2017年のT2 ASIA-PACIFIC TABLE TENNIS LEAGUE(T2 APAC)を皮切りに、2019年のT2 Diamond LEAGUE、2020年にはアメリカ進出してTHURSDAY NIGHT LIVE :T2 CHALLENGEと、規模を大きくしながら卓球をプロスポーツとして定着させようとしている。T2卓球リーグが挑戦しているのは、卓球をベースに新しいエンターテインメントを作ることだ。
T2卓球リーグを“フォーマット”と表現したのは、単に競技ルールなどを整えただけではなく視聴者目線でコンテンツとしての形を定義しているからだ。
T2卓球リーグでは選手達を映画スタジオに設置したステージ(競技スタジアムだけでなく生活エリア、練習場所なども作られている)に集め、試合に向けての準備やリーグを戦ううえでのドラマをリアリティショーとしての要素を取り入れつつ描く。
それらを複数のエピソードとして配信し、リーグ全体をドラマティックに演出する工夫がされているのだ。
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