日本人は最低賃金を抑え込む事の弊害を知らない 労働者を買い叩き続ける限りデフレは終わらない

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最低賃金が低く抑えられたままでは、さまざまな弊害があると海外では指摘されている。最低賃金が低いということは「労働分配率」が下落することを意味している。労働分配率の低下は、以下のような弊害をもたらすとされる。

① 労働生産性の低迷
② 所得格差の拡大
③ 産業構造の転換を遅らせる
④ 技術革新のスピードを鈍化させる

要するに、賃金が低いままでは消費(需要)が伸び悩み、労働生産性が上がらない。賃金の低迷が、労働者の転職意欲を削いでしまい、産業構造の転換やイノベーションを遅らせてしまう。

労働分配率は、労働者に対して適正な賃金が支払われているかどうかの指標だ。日本の労働分配率はじりじりと下落しており、資本金10億円以上の大企業では、2009年のピーク時には64.8%(財務省「法人企業統計調査年報」、以下同)だったのが、2018年には51.3%にまで下落。資本金1000万円未満の小規模企業でも、2009年の89.3%から下落を続け、2018年には78.5%になっている。

役員報酬の高額賃金をカットしてでも、従業員の給与や最低賃金を上昇させて、優秀な人材を確保しなければならないことに、残念ながら日本の経営者は気がついていない。

労働分配率低下の対処法は?

実際に、労働分配率低下への対処法として考えられているのは、次のような「3点セット」だと言われる(「労働分配率の低下をどう見るか~国際比較からのアプローチとわが国への示唆~、日本総研Viewpoint 2018年12月14日より)。

1. 持続的な賃上げ
2. 円滑な労働移転
3. 能力開発支援

こうした対処法で成功したのが、スウェーデンなど北欧諸国といっていいのかもしれない。日本の菅政権も、遅ればせながらこうした先進国の行動や考え方に呼応する形で最低賃金1000円以上を「骨太の方針」で示したわけだ。

ちなみに、これまでの日本の最低賃金は、「時間額」に変更された2002年度から見てみると、その低迷ぶりがよくわかる。2002年度は全国平均で663円(厚生労働省「年度別最低賃金額答申状況」より、以下同)。その後わずかな上昇を続け、2019年度になって27円上昇。2020年度は新型コロナウイルスの影響でわずか1円の上昇となった。

仮に、2021年度が目安どおりに引き上げられれば28円の上昇となり、2002年から2019年にかけて、最低賃金額は267円上昇したことになる。

日本の消費者物価の上昇と比べれば、最低賃金の上昇も異質ではないのだが、それにしても20年近くかけて300円にも満たない上昇というのは国際的に見て異例と言っていい。

次ページなぜ、日本は長い間「最低賃金」を上げられなかったのか?
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