コロナで瀕死「ユーロスター」なぜ危機脱却できた ワクチン接種進み、レジャー需要急増で増発へ

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英運輸省の最新統計によると、国内の鉄道利用者数はコロナ禍前の60%弱まで盛り返したという。ただ、通勤時の混雑はコロナ禍前の水準には戻らないとの見方もあり、クリス・ヒートン=ハリス鉄道担当閣外相は、「鉄道の利用者はある程度の水準まで戻ると思う。しかし、以前のようにラッシュアワーに利用者が集中するようなことは起きないのではないか」と述べている。

実際に筆者がロンドン市内に向かう通勤通学時間帯の列車の利用状況を見ても、そうした傾向があるように感じる。8月は夏休み時期で全体的に需要が少ない時期ではあるものの、通勤・退勤時間の混雑は以前と比較すればかなり緩和している。テレワークの普及が進んだ影響もあるだろう。

環境意識の高まりも鉄道需要を後押し?

では今後、ユーロスターを含む英鉄道の需要はこのまま復活に向かうだろうか。

セントパンクラス駅構内の店舗は大半が開いている(筆者撮影)

前述のようにワクチン接種率が順調に伸びる中、一般的な暮らしへの制限はほとんど解除されている。感染リスクはゼロとは言えないものの、帰省や出張、レジャーの足としての鉄道の需要は着実に盛り返している。国境を越える旅行は依然として陰性証明書持参が必要だったり、期間は短くなったとはいえ隔離を求められたりはするが、需要回復の足取りは確実に見えてきた。

また、列車運行オペレーターにとっての追い風もある。

環境問題への意識向上もあり、鉄道の存在意義は高まっている。欧州全体で高速列車網や夜行列車網の拡充が進む中、ユーロスターの定期列車増発のニュースは明るい話題と言えよう。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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