コロナで瀕死「ユーロスター」なぜ危機脱却できた ワクチン接種進み、レジャー需要急増で増発へ
ユーロスターは、英国民にとっては「何がなんでも残すべき」という乗り物だ。しかも同社従業員のうち3分の2は英国国内で勤務、関連する産業も考慮すれば約1000人の雇用を生んでいる。しかし、英国政府が支援を拒む理由はとてもシンプルだった。英政府は2014年にいわば「事業仕分け」で持株を売却。その結果、英国が拠点でありながらも、英国関連の出資者はいなくなってしまったからだ。
一時は運輸関係のアナリストの間で、「ユーロスター社のキャッシュフローは、今年夏まで持つかどうか……」という声も聞こえていた。経営破綻に陥るという見方から、事業売却の可能性まで取り沙汰されていた。
そんな中、今年5月にようやく総額2億5000万ポンドの救済支援を受けられることとなった。軸となったのはユーロスター社に55%を出資する大株主、フランス国鉄(SNCF)などによる株主保証付きの1億5000万ポンドの融資で、事実上フランス政府が公的支援を行った格好となった。これでユーロスター社は危機的状況から一応の脱却を図ることができた。
感染者数は多いが規制緩和が進む
一方で今春以降、英国をはじめとする欧州各国ではワクチン接種が順調に進み、国民の旅行制限緩和に見通しがついてきた。この好条件が後押しし、このほどついに1日1往復まで減っていた定期列車の増発を決めるまでになったわけだ。
しかし、英国のコロナ感染は、数値を見ると依然として深刻に見える。1日の新規感染者数は引き続き3万人前後で推移、死者数も100人はおろか200人を超える日もあり、収束とは程遠い。その中で大幅緩和に踏み切ったのは、ワクチン接種拡大の効果により、感染者数の増加速度に対して入院患者や死者が増える速度が緩やかになっているためだ。
このような状況を受け、いわゆるソーシャルディスタンスの確保やイベントを含む集会人数の制限など、法的義務を含む大半の規制は7月19日をもって撤廃された。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら