「ごみ収集」感染リスクと隣合わせ過酷な現場ルポ 「家族にうつしたら…」精神的にも大きな負担

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例年3月、4月は引っ越しなどのためごみの量が多い時期になるが、さらにそれに上乗せされるように排出されるごみ量は清掃職員の体力を消耗させ、疲労を蓄積させていた。

今後は真夏に向けて気温が高くなっていくので、このまま続くとかなり厳しい労働環境になることが危惧された。

都知事からの外出自粛要請がなされた初期は家内の片付けをする人が多く、タンスなどの粗大ごみが多く排出された。特に不燃ごみでは食器類が出されたため、そのごみはかなり重たく、収集職員は相当の労力を費やした。

燃やすごみには、生ごみやテイクアウト系の容器が多く、残飯も多く汁気を帯び、1つひとつの袋が重くなっているごみが多かった。まさにごみを見れば生活がわかるがごとく、外出自粛要請に従って三食を家で食べていたと、ごみでもって証明されていた。

マスクが散乱、「家族に感染させたら…」

作業風景はこれまでどおりであったが、その作業へのリスクは大きく相違していた。排出されるごみの中には、新型コロナウイルスに感染した軽症や無症状の自宅待機者のごみがあるかもしれず、感染者が触った袋を清掃車に積み込む作業は、感染リスクの高い作業となる。

中には、ごみ袋の中にマスクが沢山詰まっていたごみもあり、ひどい場合には使い捨てのマスクがごみ集積所にそのままポイ捨てされていた。感染者のごみだと明記されていれば、それにのみ細心の注意を払えばリスクは回避できようが、そうでないためすべてのごみが感染の可能性の高いごみであると想定して収集作業を行う必要があり、精神的にも大きな負担がかかっているようであった。

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少しでもごみに触れず慎重に収集作業を行いたいところだが、収集したごみを清掃工場に搬入できる時間は決められているため、リスクを認識しながらこれまでと同様に集積所に山積みされたごみを手際良く清掃車に積み込む作業を行っていくしかなかった。

ごみの中にはしっかりと結ばれていないものもあり、摑んだ途端に中身が散乱してしまうごみもある。その中に、マスクやティッシュペーパーがあると、それを拾い上げるのも躊躇される。その際は、清掃車に積んである2枚の板(かき板)を利用して直に触れぬよう散乱したごみをかき集める。

このようなリスクの高い作業を遂行するため、彼らの中には、家族への感染を心配する職員もいた。清掃従事者の安全を守るためにも、排出者には彼らの作業に配慮したごみの捨て方が問われていたといえる。

藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部准教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

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