「ごみ収集」感染リスクと隣合わせ過酷な現場ルポ 「家族にうつしたら…」精神的にも大きな負担

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しかし、事故欠勤となっている収集作業の本番を担う清掃職員を埋め合わせる体制を構築するには、かなりの苦労が強いられる状況であった。まさに滝野川庁舎の全員が団結し収集体制を維持していく形となった。

まず、休務となる清掃職員に出勤依頼し、仕事に出て来てもらうように促した。この休務の返上は、週休1日(日曜日のみの休暇)となり日々の激務の疲れが十分に癒されないまま勤務を続けることを意味した。

また、会計年度任用職員にも声をかけ、本来は休みとなる日にも出勤をお願いするようにして人員を確保した。しかし、それだけでは十分な体制は構築できないため、滝野川庁舎の本番の収集ルートを1つ解体して他の本番ルートに分散して付け加えたり、王子庁舎に解体した収集ルートの1つを丸ごと受け持ってもらったりして収集体制を維持していった。

王子庁舎からの応援については、依頼の結果、王子庁舎にて3組体制で行っている「ふれあい指導」のうち1組を解体して人員を捻出して対応してもらうことにした。

このような対応は初めての試みであったが、半期ごとに清掃事務所間での人事異動を行っており、滝野川庁舎での収集経験を持つ清掃職員もいたため、最新の収集地図を渡し、その地図に従って収集してもらう形で対応できた。

後日、統括技能長や技能長に今回の清掃職員のコロナ感染への対応について尋ねたところ次のような回答を得た。すなわち、今回の欠員数までならぎりぎり対応が可能であったが、これ以上の欠勤者が出ると対応が難しかった。また、もし同時期に自然災害が発生してしまうとまったく対応ができないと思われる。王子庁舎には迷惑をかけたが、北区には清掃拠点が2カ所あり助かった。

コロナ禍で大変なのは清掃部門だけではないのは十分わかっているが、ギリギリの人数で業務を行うよりもある程度の余裕のある体制で清掃に臨みたい、と述べていた。

ごみの量は通常の2割増し、疲労困憊の職員

筆者は初回の緊急事態宣言下が発出され不要不急な外出の自粛が求められていた頃、その状況下で行われる収集作業の現場を自らの目で見たく思い、個人的に2020年4月29日に新宿区の収集の現場、主に住宅地に足を運んだ。作業の邪魔にならぬよう離れて観察するのみであったが、収集現場の状況を把握することができた。

ごみ収集の現場は、いつもと同じ作業風景であった。普段からマスクを着用し、グローブをはめて収集作業を行っているため、コロナ対策として特別な装備を装着して作業を行っていたわけではない。

しかし、外出自粛や在宅勤務などで家にいる人が増えたため、収集するごみの1つ当たりの大きさは増し、その量は大変多く、通常の約1.2倍にも及んでいた。

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