タリバンが次々危害「執拗に狙われる人々」の素性 諜報機関職員らの「ブラックリスト」が明るみに
「空軍パイロット『アフガン超緊迫脱出』の一部始終」(8月20日配信)で報じたように、アメリカ空軍とともに治安維持に向けて数々の任務に当たってきたアフガニスタン空軍のサイードさん(仮名)も、「自分はタリバンの“ブラックリスト”に間違いなく載っている。カブールにいるのが発見されれば殺される」と身の危険を感じ、タリバン兵を装った服に変装して、妻とともにアフガニスタンから脱出した。
事実、空軍を持たないタリバンにとって、アフガニスタン空軍の存在は脅威であり、今月に入ってからもアフガニスタン空軍のパイロットが暗殺される事案が発生。勤務外のパイロットを狙ったタリバンの攻撃は激化してきていた。サイードさんと妻を乗せた車が空港に近づいた際に15発ほどの銃弾がすぐ目の前で乱射され続けたそうだ。
サイードさんが乗せられたアメリカ軍の輸送機には、同じアフガニスタンの空軍関係者を始め、政府関係者や通訳として国際機関などに貢献したアフガニスタン人家族らがすし詰め状態で乗せられていたと言い、さながら、国を支えてきた人々が次々にアフガニスタンを退避している状況といえる。だが、本人だけでなくその家族さえも標的に危害が加えられる事例が次々に報告されるなか、早急な国外退避はもはや予断を許さない。
タリバンのブラックリストとは─
今、次々に報告される、「ブラックリスト」に掲載されているとする元政府関係者やアメリカ軍協力者らへのタリバンからの攻撃。では、その「ブラックリスト」なるものとはいったい、どのようなものなのだろうか。
筆者が入手した、国連に情報提供を行うノルウェー国際分析センター(RHIPTO)の機密文書からは、タリバンが身柄拘束をする対象の人物らの名前を連ねた、その「ブラックリスト」の存在が浮かび上がってくる。タリバンは主要都市を制圧するに当たって事前に重要な個人のマッピングを行っていたとされ、作成したリストには、アフガン軍や情報機関でアメリカやNATOなどの協力のもとに働いていた重要人物らを標的として優先的に追跡できるよう、個人情報がまとめられていると報告されている。
具体的には、タリバンはイスラム教の礼拝所モスクや送金業者などに連絡を取って、アメリカ軍などに協力してきたと思われる人物の名前、電話番号、家族構成などのリスト化を進めているとみられ、さらに現在、タリバンに協力することを希望する新たな情報提供者を急速に募っており、諜報ネットワークを拡大しているとされる。
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