接種率78%「イスラエル」で死亡者増加のなぜ

「集団免疫」の勝利から一転、ロックダウンも

バリサー氏は、当初の対策は効果を上げたとはいえ、イスラエルのパンデミックはまだ終わっていない、と5月に警鐘を鳴らしていた。ワクチンの効きにくい変異株が出現する危険が引き続き存在していたからだ。

人口900万人のイスラエルには、接種を避けている人が今も100万人ほどいる。さらに、最初に接種を受けた高齢者を中心に、ワクチンによる免疫が時間とともに弱まってきたことを示す証拠が科学者によって次々と確認されるようになった。

デルタ株への予防効果は39%に

イスラエル保健省が7月下旬に公開したデータによると、イスラエルにおけるファイザー製ワクチンの感染予防効果は1〜4月上旬の95%に対し、6月下旬〜7月上旬には39%まで下がっていた。ただし、重症化予防効果はいずれの期間も90%を上回っている。

専門家は、これは暫定的な評価にすぎず、まだ科学的に証明されたわけではないと言うが、それでも感染状況は夏にかけてスパイラル的に悪化した。

学校が休みになり、国内のホテルも家族連れで混み合うようになった。デルタ株が世界中で猛威を振るう中、1日当たり最大4万人が国外に出かけた。6月には新型コロナ感染症による死者がゼロの日も多かったイスラエルだが、8月の死者数は、月末まで10日以上残した段階ですでに230人を超過した。

感染の中心はこれまで、ワクチン接種率が低く、密集して暮らす超正統派ユダヤ教徒のコミュニティーだったが、今回は中産階級が暮らす接種率の高い郊外が中心になっている。

専門家からは、新政権の対応の遅さを批判する声が上がる。

今回の感染再拡大は、6月中旬のベネット新政権発足と重なるようにして進んできた。すでに3度のロックダウンを経験したイスラエルでベネット政権は、ウイルスと共生しながら経済をフルに回すという新たな方針で臨んだ。ベネット氏はこれを「ソフトな抑え込み」政策と呼んだ。

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