緊急事態下の東京五輪はコロナ拡大を助長したか 直接の影響より意識の変化に与えた影響が深刻

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冬に大きな波も(ブルームバーグの付けた見出し)

冬にはより大きな感染の波が来る可能性

東京大学の藤井大輔特任講師と仲田泰祐准教授は五輪による国内感染への影響を開会前に分析しており、五輪関係の入国者による直接的な国内の一日の新規感染者数への影響は15人程度だと試算していた。

仲田氏は、大会関係者の実際の感染者数は1日平均で約12人であり、分析通り「直接影響はやはり限定的だったのではないか」とした一方で、五輪がなかった場合との比較が必要になるため、間接的な影響を「定量化するのは難しい」と述べた。

ジョージア州立大学のホリー・ウィルキン准教授(ヘルス・コミュニケーション)は、「昨年五輪が延期されたのは、開催が安全でないと判断されたからだ。今年の開催は、人々にもう安全だと言うメッセージを送っていることになる」とした上で、コロナの脅威への考え方に影響を与え、行動制限の必要性についての「姿勢を変えてしまう可能性がある」と指摘する。

態度の変化は行動や感染状況にも影響を与える。仲田氏らが緊急事態宣言の再延長が決まった17日に行った最新のシミュレーションでは、楽観的な仮定でも感染力が強いデルタ株に対し宣言期間中に1日の新規感染者数は大きく減らないと試算した。

仲田氏は今後、緊急事態宣言が秋にいったん解除されると仮定した場合、冬には「今より大きな感染の波が来る可能性が高い」と指摘した。

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著者:黄恂恂、Isabel Reynolds

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