好調が予測される3つ目の業界が工作機械だ。「機械を作るための機械」である工作機械は、世界的にも日本企業の競争力が強い分野だ。2020年末からはエレクトロニクス機器や、電動車を含む自動車の生産回復によって、ファナックやDMG森精機など、上場する工作機械大手の業績も急回復している。
2030年にかけては、先進国での省人化ニーズと新興国での市場拡大が追い風になる。現在の世界最大の工業国である中国に続き、将来的にはインドやアフリカが生産・消費の地域として、存在感を高めていくことが予想され、工作機械を売り込む需要地が増える。
さらに先進国である欧米や日本などでも商機がある。熟練労働者の高齢化の流れは止まらず、ますます人手不足が深刻化する。AI(人工知能)やセンサーを通じてさまざまな情報を計測・数値化するセンシング技術を活用して、高精度の加工を誰でも行えるようにする機能や、加工工程間の人手作業を自動化する機能など、工作機械の高機能化が進んでいくだろう。
最大顧客である自動車産業の変革もチャンスだ。当面はハイブリッド車などへ向けエンジン部品の生産が継続される一方、EV向けのバッテリーやモーター関連など新しい部品加工の需要が生まれる。
雨が降り続く製薬、証券業界
一方で、2030年までに厳しい状況が続く「雨の業界」もある。その筆頭が医薬品を生産・販売する製薬業界だ。
高齢化社会が進み、医薬品の利用がさらに増えるものの、医薬品の価格は政府が決める公定価格という点に問題がある。政府は膨張する医療費負担を抑えるために、これまでは2年に一度だった医薬品価格の改定を2021年から毎年行うようになった。今後も、医薬品の価格下落はますます加速していくだろう。
こうした中、経営体力に乏しい中堅以下は単独での生き残りが難しい状況になる。新薬を発売してから20年が経つと特許が切れ、より価格の安いジェネリック(後発薬)医薬品が市場を席巻してしまう。それまでに儲けを生む、次の新薬を生み出さなければならないが、生活習慣病のような市場の大きい薬は開発され尽くしたともいわれる。
残っているのは、がんなど巨額の開発資金が必要になる分野や開発が難しく患者数の少ない希少疾患などだ。市場拡大の恩恵に浴してきたジェネリック医薬品メーカーも、政府が目標に据えてきたジェネリック薬の使用比率が80%に達し、これからは市場拡大ではなく、奪い合いの競争に突入する。
製薬業界と同じように厳しい状況が予測されるのが証券だ。
金融分野で2030年に「雨」となる業種の代表格は地方銀行で、人口減による経済縮小にさらされ、再編淘汰の圧力がかかっている。が、苦境に立つのは地銀だけではない。
証券業界では、対面営業を中軸に据えてきた従来型の証券会社の経営環境はさらに厳しくなることが予想される。中心顧客層がすでに高齢で、若い世代ではネット証券の利用が一般化しているからだ。
そのネット証券では現在の収益柱である手数料の完全無料化に向けたカウントダウンが進んでおり、LINE証券やCONNECTなどのスマホ専業証券、AIが最適な投資戦略を提案するロボアドバイザーとの競争も控えている。
日本の個人株主数は年々増加しており、2020年度は前年度比308万人増加して5981万人となった。だが、競争環境はますます厳しくなるばかりで、2030年の業界勢力図は様変わりしている可能性が高い。
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