古舘伊知郎が「とくダネ!」終了を心底残念がる訳 小倉智昭は毒っ気が持ち味の最後の司会者

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50年ぐらい前は、「ちょっと時間がないんだけど」って言いながら1、2時間ぐらいは平気で話す。柱時計を見て、「ごめんなさいね、1時間しかないんだけどいいかしら?」。今は、「ごめんなさい、40秒だけならありますけど」。

話す前に、「ごめんなさい」って謝る人が昔より増えたのはせっかちになった証拠ですよね。起承転結のあとに「ごめんなさい」だったのが、「ごめんなさい。ちょっと時間ないんですけど」こんなふうに先出しで謝る時代になって、もはや何について謝られたのかわからない。実はあれ、謝っているんじゃないですね、もはや。「了解してくれるよね?」って意味ですよね。「悪いと思っているんだから、ツッコまないでよ!」ってことです。そんな世知辛い時代に、28年ですよ。

世知辛さに逆行する実績をつくった小倉さんの番組は、巣鴨のとげぬき地蔵尊のように存在し続けてほしかった。そしてネットニュースに出たら、通りがかりの人から、たわしでごしごしと洗われてほしかった。痛いけど。

毒っ気が持ち味のキャスターの終焉

『報道ステーション』を12年ぐらいで辞めてしまった僕が言うのもなんですし、テレビの編成でもないのに言うのはおこがましいですが、もう1つだけ小倉さんの去就に関して思ったのは、テレビ局って、1つの番組を終わらせて新しい番組を立ち上げているとき、「新しくすれば、当たるよね」って、本気で信じて頑張っているとは言い切れないんですよ。新しく衣替えをするのは、その分、今まで入ってくれなかったスポンサーが入ってくれる可能性があるからです。

部屋の衣替えをするとき、もっと快適でいい空間を作りたいからやる場合と、実家から母親が1カ月泊まりに来るから、今の空間の方がいいけど、やむを得ず衣替えする場合ってあるじゃないですか。

『とくダネ!』の終了って、後者だと思うんですよ。だから僕は、28 年間も続いた小倉さん絡みの午前中を変えるリスクを考えてしまうわけです。小倉さんがいなくなったら、民放テレビの朝は、無難な観葉樹がずらりと並ぶ、表参道のボタニカルカフェみたいな番組ばかりになってしまいますよ。

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