古舘伊知郎が分析「笑福亭鶴瓶のスゴイ雑談力」 組んだ相方が生き生きする司会のすごみ

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鶴瓶さんって、一歩引いて相手を立てるイメージもありますよね。いまできる最大限の金無垢の衣装をゲストに着せてくれる。これってアントニオ猪木さんのプロレスと似ています。相手の良いところを引き立てながらも、最終的には自分の勝利を目指す。

それを実感したのは、深夜番組の『鶴瓶のスジナシ』に出たときのことです。鶴瓶さんとゲストがぶっつけ本番、台本なしで即興ドラマを演じるという、出演する側は非常に勇気のいる番組です。

決して自分のペースに持ち込まない

ドラマの舞台設定は外国のチャイナタウンにあるような食堂。そのテラスに僕が座っているところからスタートしました。そこで鶴瓶さんと出会って、お互い探り合いで即興ドラマを進行していく。

僕は地味な衣装を選んでおいて、遅れてきた鶴瓶さんの格好を見て、その雰囲気次第で流れを決めようと考えていました。

そうしたら鶴瓶さん、いきなりかましてきたんですよ。金髪のロングヘアのカツラに真っ赤なチャイナドレスを着て出てきた。反則じゃないですか。混乱させて様子を見たんだと思うんですけど、僕はもうどうしていいかわかんなくなっちゃって。

でも人間って窮地に追い込まれると何か出てくるもので、なぜか僕がミシュランの覆面捜査員みたいな設定になったんです。気がついたら、「食べることは生きてくうえで大事だけど、星を決める行為についてはこの頃反省してるんだ」とか言っている。

鶴瓶さんも、「そらそうや。星なんかで決まらんわ」みたいに合わせてくる。最初こそかましてきたものの、鶴瓶さんは決して自分のペースに持ち込まない。あくまで僕のペースに乗っかってくれる。人に合わせながら、上手くバトルをやる。泳がせ上手です。まるで50メートル8コースのプールの監視員です。だってつねに全体に目を配っていますから。

司会者という存在は廃れつつありますが、それでもまだ完全に絶滅したわけではありません。MCが中心に存在する番組も、まだあります。そんな番組での鶴瓶さんのMC力は一級品です。

何がすごいかって、鶴瓶さんは中居正広君はじめ、誰かと組んでMCをやる場合が多いですが、組んだ相方が生き生きしている。あれは鶴瓶さんというビリケンさんがいて、その輪の中で安心して自由に振る舞うことができるからだと思います。

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