手術する物資もない「ハイチ」大地震後の惨状 栄養不足や貧困が一段と深刻化する可能性

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外科医の1人、ジェームズ・ピエール医師は、庭で遊んでいて家の壁に押しつぶされ腹部外傷を負った5歳の少女の手術を終えたところだった。「ここでは簡単な手術しかできない。手術に使えるものが何もないのだ」と、ピエール医師は、野外で毛布の下で息をする少女の苦しそうな胸部を見ながら語る。負傷者のベッドの周りでは鶏が走り回っていた。

空港では週末に、レカイ地方の元上院議員であるエルベ・フォカンド氏が小型プロペラ機を利用して、首都まで緊急性の高い人々を運んでいた。1これまでに50人を運んだという。「まだ重症者30人が待機しているが、この飛行機には7座席しかない」。

「無料フライト」を求めて空港へ

パルメラ・クラウディウスさん(30)は、親戚が彼女を空港に運ぶために手配したトラックのベッドに横たわっていた。彼女の顔は左部分全体が腫れていた。クラウディウスさんは、地震発生時、レカイ郊外のカンプペランの自宅にいて家全体が揺れるのを感じた。外に逃げようとしたとき、壁が崩壊した。

彼女の家族は航空券を買う余裕がないため、空港に向かったほかの多くの人と同じように、首都への無料のフライトを望んでいた。クラウディウスさんは足の感覚がないというが、原因を調べるにも町ではレントゲン検査ができない状態だという。

一方、前出のデスティン医師は、同じく外科医である父親を治療のためにアメリカへ連れて行こうとしていた。父親は屋根が倒壊したことで、頭部に重い外傷を負ったという。

デスティン医師は、適切な物資がタイムリーに届かないかぎり、何千人もが致命的な感染症にかかる可能性があると予測する。栄養不足が深刻化する可能性もあり、今回の地震により、貧困化一層深刻化する可能性が高いと見ている。

(執筆:Maria Abi Habib記者、Andre Paulte記者)

(C)2021 The New York Times News Services 

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