外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定

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では、北海道の森林を取得しているのはどこの国が多いのか。直近2年のデータを見てみよう。

2019、2020年の外資(海外法人・海外企業の日本法人)による森林取得はあわせて47件・252haで、21件が中国(香港)だった。

利用目的でもっとも多いのは「資産保有」だ。転売してビッグマネーを手に入れようという投資目的である。次に目に付くのが、法人の「別荘地開発」や個人の「別荘用地」。あとは「太陽光発電」「鉱物資源の調査等」で、「不明」「未定」も少なくない。

外資による土地買収の是非

7月1日に発表された路線価(国税庁が発表する相続税等の評価基準となる地価。公示地価の約8割)では、6年連続で上昇率ナンバー1を続けていた倶知安町の中心地(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の価格は72万円/㎡ で前年比横ばいだった。路線価が落ち着いたことで、外資による買収に一段と拍車がかかる可能性さえある。

レトロなニセコ駅舎(写真:筆者撮影)

外国人による土地買収については、6月、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などの利用を規制する「重要土地利用規制法」が成立した。

しかし、防衛拠点に絡まない森林などは対象外だ。北海道は水源地を守るために、水源保全地域内の土地所有者の権利移転について事前届け出制を条例で定めている。

森林法による森林取得の際の届け出制もある。しかし、届け出がどこまで正確に行われているか分からず、日本企業をダミーにするといった案件もあると指摘されている。

外資の手に渡る土地は森林だけに限らない。ゴルフ場やスキー場などすでに開発済みの土地も含まれる。これらを加えたら、とても30㎢程度では済まない。使途が不明なケースも少なくない。リゾート買収をめぐっては、夕張市の夕張リゾートのように外資の手に渡った揚げ句、倒産といったケースも出ている。こんなことになっては街の再興もままならない。

急速な開発でスキー場の混雑や温泉の湯量減少などの影響が出ている倶知安町は、環境保全に向け、未開発地が多い地区での大型ホテルの建設制限など規制強化に向け、具体案の取りまとめを進めているが、外資の土地取得制限は別問題だ。

もちろん、バブル崩壊後元気をなくしていた観光地がよみがえり、雇用を生み地元経済を活性化させているというプラスの面も大きい。しかし、10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要なテーマだろう。

国全体でも、より踏み込んだ立法措置も含めて考える時期ではないだろうか。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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