成功ストーリーばかりを学んでも意味がない理由 本来のナレッジマネジメントは失敗知識の活用

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「失敗は成功のもと」とはいうが、失敗の概念を変え、目的を問い直すことが必要(写真:ふじよ/PIXTA)
「イノベーションには失敗が不可欠」と言うけれど……。では、どんなふうに失敗するのか?
今の社会は、変化のスピードが速く、ますます複雑になってきている。経済や政治でも大規模な変革が続き、過去の知恵や経験に基づく推論は通用しない。予想もしない出来事が次々と起こってくる。今までのように成功体験ばかりを賞賛し、失敗を隠そうとする風潮は不合理だ。失敗は次の成功につながる学びの宝庫である。
このたび、オランダのビジネススクールで失敗研究に取り組んでいるポール・ルイ・イスケ教授の著作『失敗の殿堂:経営における「輝かしい失敗」の研究』が邦訳出版された。
本稿では、イスケ教授と親交が深く、同書の監訳を担当した紺野登氏が、イノベーション・プロジェクトにおける失敗の知識活用の意義について論じる。

新規のアイデアを殺さないために

イノベーションについては、企業のトップや関係者がいろいろと戦略やビジョン、あるべき組織体制の必要性などについて語る。しかし、結局のところ、イノベーションは現実のプロジェクトという場において試みられ、プロジェクトにおいて成功する。

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一方、プロジェクトには(それが形になる前から)いろいろな段階があって、それぞれに紆余曲折がある。多くは実を結ばない。生存競争をかいくぐっていかなければならないのだ。

だから、成功率も低いと言われる。しかし、それは3%の成功と97%の失敗などではなく、100%の試行錯誤だ。どれだけ試行錯誤がうまくできるかがポイントである。

イノベーションは、かつては偶然生まれてきたアイデアが実を結んだり、研究部門の発明が新たな製品につながって生まれるといったイメージが強かった。だから、マネジメント(管理という意味合いで)の対象ではないという認識が高かったように思う。

こうした「脆弱」なもの(計画できないもの)は大企業では潰されがちなので、「大企業ではイノベーションは起きない」といったバイアスが生み出されてきた。

ところが最近では、スタートアップイベントでのピッチコンテストや、大企業での社内アイデアソンが盛んだ。ある意味、多くのアイデアを募って、そこから新たな事業の芽を発見して選別、育成していこうという、システマティックなイノベーションのスタイルに変わった。

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