成功ストーリーばかりを学んでも意味がない理由 本来のナレッジマネジメントは失敗知識の活用

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

では、そこには何らかの原則や「型」があるのだろうか。

16の「輝かしい失敗」のパターン

こうした意義深いコメントには、いくつかのパターン(型)がある。『失敗の殿堂』に紹介されている「輝かしい失敗」は、全部で16のパターンに分類されているが、専門家のコメントに共通するものが多い。これらのパターンは、成功のパターンやストーリーではない。ありえる「落とし穴」をパターン化しているのだ。

ただし、その応用には想像力を働かせる必要がある。以下に、各パターンの意味するところと、そのときに問いかけられるフレーズを例として挙げてみた。

(1)見えない象:(意味)全体を見ないことで誤る→
(問い)「全体でなく部分しか見ていないのでは?」「違う視点で眺めてみたらどうでしょう?」「他のプレイヤーの動きをもっと見てみたら?」
(2)ブラックスワン(黒鳥):(意味)予見できない出来事が続けて起きる→
(問い)「もっとワイルドなシナリオが必要なのでは?」「ブラックスワンが何羽も出てきたら?」
(3)財布を間違う:(意味)誰かにとっては良いが、誰かには不都合→
(問い)「顧客価値は高くても、全く儲からないビジネスモデルになっていないか?」「自社が全然儲からないが?」「誰が儲かる構図になっていますか?」
(4)チョルテカの橋:(意味)解決すべき問題がすでになくなっている→
(問い)「当初の想定から現在は状況が変化してないか?」「それって、もう遅い可能性がありますが?」
(5)欠席者のいるテーブル:(意味)ユーザーや重要な関係者が参加していない→
(問い)「誰も欲しがらない商品やサービスを提供しようとしてないか?」「主役のいないパーティ?」
(6)熊の毛皮:(意味)取らぬ狸の皮算用→
(問い)「仮定と現実を混同していませんか?」「妄想に走っていませんか?」
(7)電球の発明:(意味)「何をやっているかがわかっている」状況は、まだ既知の領域にいるということ、試行錯誤の価値を無視してはならないこと→
(問い)「この計画どおりにいくと思い込んでないか?」「真空状態にいるような感じはありますか?」
(8)兵隊のいない将軍:(意味)アイデアがあっても資源なし→
(問い)「だれもついてこないビジョン?」「単なる妄想になっていないか?」「リソースをどうやって調達してきますか?」「パートナーは誰ですか?」
(9)捨てられないガラクタ:(意味)やめられない新規事業→
(問い)「撤退プランは考えていますか?」「要らない仕事を抱えていませんか?」
(10)深く刻まれた渓谷:(意味)染み付いた思考パターンから抜け出せない→
(問い)「バイアスがあるんじゃないの?」「それって、これまでのやり方の繰り返しになっていない?」「トートロジー的思考(事故が起きていない、だから安全だ)?」「よくあるイメージの再生産になっていないか?」
(11)右脳の功罪:(意味)合理的根拠のない直感的判断で誤る→
(問い)「自分の直感を過信していないか?」「アートだけではダメなんじゃないか?」
(12)バナナの皮ですべる:(意味)アクシデント、細部に悪魔が潜む→
(問い)「◯◯の値段が上がったらどうします?(実際にあった話:切手代が上がるとダイレクトメールの需要は減る。だから新印刷工場の投資規模は小さくした)」
(13)ポストイット:(意味)失敗したけれど偶然の幸運にも恵まれた→
(問い)「失敗を振り返ってみよう」「別の発見があったのでは?」
(14)アインシュタイン・ポイント:(意味)「単純化しすぎても複雑化しすぎてもいけない」というアインシュタインの言葉→
(問い)「木と森をそれぞれ見よう」「中庸の視点が求められますね」
(15)アカプルコの断崖ダイバー:(意味)海に飛び込むのが早過ぎれば、そこに水はないこともある→
(問い)「ファーストペンギンはいいけれど、そこに水はあるの?」
(16)勝者総取りの理:(意味)生き残れるのは1人しかいない→
(問い)「席は1つしかないかもしれないよ」「勝てるシナリオになっていますか?」
次ページこうしたパターンがわかったらどうするのか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事