ソフトバンクG、「4兆円ファンド」の明らかな変質 中国リスクの顕在化でもアクセルを踏み込む
ソフトバンクグループの株価が振るわない。昨年は総額2.5兆円もの自社株買いプログラムが好感され、株価は右肩上がりだった。が、それが終わりに近づくと株価は下落。2021年3月に年初来高値をつけてからは4割近く値を下げた。これには、中国の投資先の株価下落や評価減のリスクが懸念されている側面もあるだろう。
第1四半期(2021年4~6月期)において、AI(人工知能)関連のベンチャーに投資するソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資損益は2878億円と前年同期比で2.9%減った。
複数の投資先売却や、中国の配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)が上場したこと、アメリカのフードデリバリーサービス最大手ドアダッシュの株価が上がったことで9000億円近くの含み益が出た。一方で韓国のネット通販(EC)大手クーパンの株価下落などにより約7000億円の評価損計上が足を引っ張った。
中国リスクが顕在化するのはむしろ今後だ。中国政府は目下、大手IT企業への管理と規制を強めている。SBG本体が出資し、保有資産の約4割を占めるアリババグループは4月に独占禁止法違反で巨額の罰金を科された。
次の決算で影響が顕在化
ビジョン・ファンドの主要な出資先にも大きな打撃だ。滴滴やトラック配車サービスの満幇集団(フル・トラック・アライアンス)は政府の安全保障上の審査対象となり、株価はともに6月末以降3割以上下落した。
政府の審査は海外で上場する中国企業にもおよび、ビジョン・ファンドの出資先で、アメリカで上場するフィンテックの金融壱帳通(ワンコネクト・フィナンシャル・テクノロジー)や不動産マッチングサービスの貝殻找房(KEホールディングス)の株価が同期間に5割以上下落している。
孫社長は8月の決算会見で、「中国のハイテク株は受難のときだ。業績は伸び続けているので、長い目で見れば株価は持ち直すと信じている」と語った。それでも、投資先の株価の動向を踏まえれば、第2四半期(2021年7~9月期)で、中国の投資先の評価減が大きく影響しそうだ。
もっとも、足元の中国リスクから投資に対して弱気になっているわけではない。ビジョンファンドはむしろアクセルを一段と踏み込んでいる。その中核的な存在が、SBGの単独出資で昨年から始めた2号ファンドだ。
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