ソフトバンクG、「4兆円ファンド」の明らかな変質 中国リスクの顕在化でもアクセルを踏み込む

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2020年12月末時点で100億ドルだった投資枠は、今年6月までに400億ドルに拡大。投資先数は5月11日の決算発表時点で95社だったが、3カ月で66社増えた(合計161社)。この水準は、すでに新規投資を終えた1号ファンド(92社)を大きく上回る。

孫社長は「2号ファンドは、大きなユニコーン企業だけでなく、ステージの早い(創業から間もない)会社にもたくさん投資している。1件当たりの投資額は1号ファンドよりも小さく、リスク分散が進んでいる。投資チームのメンバーが経験値を蓄積してきたことも大きい」と語る。

リスク分散という意味では、目下政治リスクの大きい中国への投資は抑制的だ。ビジョン・ファンド全体(1号、2号、ラテンアメリカ・ファンド)では2021年7月末の時価ベースで中国比率が23%だが、2号ファンドは11%に抑制。その分、南北アメリカやヨーロッパでの投資を広げている。

この4~6月にソフトバンクグループが2号ファンドに拠出した1.6兆円のうち、半分弱は1号、2号ファンドからの分配金、そして昨年設立した上場株の投資会社からの資金でまかなった。投資回収で得た資金を新たな投資に振り向ける「エコシステム」が機能しつつあることも注目すべき点だろう。

アリババと並ぶ存在感

1号ファンドはサウジアラビアの政府系ファンドなど外部投資家から資金を募った。その後、投資先であるアメリカのシェアオフィス大手ウィーワークの経営悪化や配車アプリ大手ウーバー・テクノロジーズの株価急落が相次ぎ、巨額の損失を計上した。

こうした事態を受けて、2号ファンドは外部からの資金集めを断念し、SBGが自己資金を投入した経緯がある。厳しい船出だったが、「結果的に自分たちのお金だけで回るようになった。外部投資家からは参加したいという声もちらほら出始めている」(孫社長)。

もっとも、外部資金を当てにするどころか、ファンドへのコミットメントを示すため、今回孫社長ら経営陣が2号ファンドに最大26億ドルを出資すると発表。「私個人のSBG株の財産価値は3.5兆円程度。2000億円超のリスクには耐えられる。一般的なベンチャーキャピタルは経営陣が1円もリスクを取らず、リターンだけをもらっている。それはよくない」という理由からだ。

SBGの時価純資産(保有株式価値から負債を差し引いた金額)はアリババが最大の39%を占める一方、ビジョン・ファンド全体でも34%まで拡大。その存在感はいっそう高まりそうだ。約4兆円まで投資枠を拡大した2号ファンドによる矢継ぎ早の投資で、数年後の刈り取り期に花を咲かせられるのか。株価の行方を占ううえでも、その動向は一段と重要になる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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