ただ、災害リスクの高い区域として指定できるのは、これまでは土砂災害についてのみで、水害については存在しなかった。
そこで、浸水災害のレッドゾーンといえる「浸水被害防止区域」の新設などを盛り込んだ流域治水関連法が今年の通常国会で成立した。これにより、土砂災害の危険はなくとも浸水災害の危険がある区域を都道府県知事が浸水被害防止区域に指定し、住宅等の建築や開発行為を制限できるようになった。
区域指定に積極的な自治体に支援を
ただ、浸水被害防止区域に指定して建築制限をするには、浸水被害をもたらす恐れのある河川を「特定都市河川」に指定しなければならない。特定都市河川はこれまで、市街化の進展により河川整備で被害防止が困難な河川と定義され、東京都、神奈川県、愛知県、静岡県、大阪府を流れる8河川しかなかった。
ところが、近年の豪雨災害は大都市圏以外の地域で多発している。このことから、前掲の流域治水関連法では、バックウォーター現象の恐れや狭隘な川幅など、自然的条件により被害防止が困難な河川も特定都市河川に指定できるよう改正した。
国は、都道府県知事が早期に浸水被害防止区域を指定できるよう、財政支援を準備している。浸水被害防止区域に指定すると開発や建築が制限されるため地価の下落が予想され、地元の反対に遭う恐れもある。しかし、住民の生命と財産を守るために、客観的に見て災害リスクが高い区域は躊躇なく指定すべきである。それを後押しすべく、財政支援は区域指定に積極的な自治体に優先すべきである。
また、災害リスクの高い区域にある医療・福祉施設の移転も促す必要がある。その移転促進のための予算も2021年度予算には計上されている。
このように、豪雨災害による損害を軽減するためには、ゾーニング(土地利用規制)が今後重要になってくる。ハード面ばかりに使い切れないような巨額の予算を計上するのではなく、災害リスクが高い区域における建築や開発の制限といったソフト面での対策に注力することが豪雨災害への備えとなる。
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