復興五輪なんて嘘「今も苦しむ被災者」悲痛な本音

五輪期間中に帰還困難区域で見た厳しい現実

2011年3月の原発事故後、浪江町役場は福島県・中通り地区の二本松市に移った。公共施設内に役場機能が設けられ、プレハブの仮設住宅も同市内に次々と完成。高校もここで再開することになった。柴田さん一家は栃木県の親戚宅での避難生活を経て、二本松市へ。6月には家族9人が4つの仮設住宅に分かれて入居した。

柴田さんは思い悩んだという。仕事も家もなくなった。住宅ローンなどの残債が600万円以上ある。

二本松市の中学に入学した次女は、同じ浪江町出身の友だちが新しい級友から「放射能を浴びてきたんだから寄ってくるな」とばい菌扱いされていることにショックを受け、不登校になった。柴田さんは「このままでは家族も守れない」と不安を募らせていく。

柴田さんはその夏、倒れて救急車で運ばれた。メニエール病。右耳が聴こえなくなった。めまいもひどく、部屋にこもる時間が増えた。やがて、今度は双極性障害(躁うつ病)と診断された。

それでも妻らの支えもあり、生活を少しずつ立て直した。「家族みんなで住める場所を」と築66年の中古住宅を購入し、大掛かりなリフォームを施した。そうした資金は、賠償金では十分でなかったという。

慰謝料のことでからかわれた悔しさ忘れられない

柴田さんはいま、難聴やめまいを押して建設会社でアルバイトとして働いている。50代半ばという年齢のせいで、正社員の職は見つからない。東京電力から出ていた月10万円の慰謝料は4年前に終わった。その貯金も減る一方となり、気持ちが休まることはない。

アルバイト先で以前、同僚に何度も慰謝料のことを言われた。「毎月10万円もらっていいな」と。おごれと言われることもあった。あるとき、外での休憩時間にまた同じことを言われた。いつものような、からかう口調だ。あの悔しさを柴田さんは忘れたことがないという。故郷や日々の暮らしは、いったい、いくらだと言うのか。柴田さんは言い返した。

「おれ、あんたに10万払うから、仕事辞めて、家捨てて、全然知らない所で暮らしてみろ。そうすっとわかるから。生活できるんだったら、してみたら」

それ以降、その同僚は何も言わなくなった。

「賠償金のことを言ってくる人は、故郷や仕事を一度に奪われる状態がどんなものか、想像ができないんだ」 

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