アメリカのアップルは例年9月、スマートフォン「iPhone」の新機種を発表する。その時期が近づくなか、アップルにとって最大の生産委託先であるEMS(電子機器の受託製造サービス)大手の富士康科技集団(フォックスコン)が新機種のフル生産に入っている。
全世界で販売されるiPhoneの半分は、中国河南省鄭州市にあるフォックスコンの製造拠点「鄭州科技園」で生産されている。同社の開示資料によれば、鄭州科技園には3区画に分かれた工場群に90本を超える生産ラインがあり、繁忙期のピークには約35万人の従業員が生産に携わる。
この数カ月、鄭州科技園では給与に臨時ボーナスを上乗せして従業員を募集している。7月下旬に掲出された募集要項によれば、18歳から45歳までの一般従業員の給与は諸手当込みで4000~4500元(約6万8200~7万6725円)。そこに加えて最大で9500元(約16万1975円)の「繁忙期激励ボーナス」を支給するとしている。
コロナ禍でインドから中国への生産移転も
この臨時ボーナスの目的は(iPhone新機種の生産に必要な)労働者を最短期間でかき集めることにあり、フォックスコンは人手不足の時期にしばしば同様の手段を用いている。例えば2020年3月、中国で新型コロナウイルスが流行して従業員の新規採用が困難になった時にも、フォックスコンは7000元(約11万9350円)を超える臨時ボーナスを提示した。
今回も高額なボーナスで採用を急いでいるのは、フォックスコンに対するアップルの発注量が大幅に増加したためである可能性が高い。証券会社の銀河証券は6月27日に発表したレポートのなかで、iPhone新機種の出荷台数が2021年末までに8500万~9000万台に達し、旧機種を含めたiPhone全体の2021年の出荷台数は前年比13%増の2億2000万台に上るとの見通しを示した。
そんななか、新型コロナの世界的な感染拡大の影響により、アップルが進めてきた(中国以外の)アジアやそのほかの国での生産能力増強に遅れが生じている。その分だけ、より多くのiPhoneの生産委託が中国に回ってきているという事情もある。
2020年7月、フォックスコンはインド東南部のチェンナイに10億ドル(約1105億円)を投じて新工場を建設すると発表。翌2021年3月には同工場でiPhoneの組み立てを開始した。
ところが2021年5月以降、インドでは新型コロナの変異型であるデルタ株が爆発的に流行した。5月11日付のロイターの報道によれば、フォックスコンはチェンナイ工場内での感染拡大の予防策としてiPhoneの生産を50%減らし、その分を感染が落ち着いている中国の工場に振り向けた。
(財新記者:周叢浩、王婧)
※原文の配信は7月26日
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